技術資格試験合格体験記

■技術資格試験合格体験記

　 公共工事の品質確保のために

　〔取得した資格〕
　　公共工事品質確保技術者（Ⅰ）
　〔資格取得年度〕
　　平成28年度

　受験の動機・経緯
　公共工事においては、公共工事の品質確保の促進を図ることを目的に、平成17年に議員立法により、「公共工事の品質確保の促進に関する法律」いわゆる品確法が成立し、その後、平成26年には、現在及び将来の公共工事の品質確保とその担い手の中長期的な育成・確保の促進を図ることを、新たな法律の目的として追加する「公共工事の品質確保の促進に関する法律の一部を改正する法律」が施行されました。
　平成27年には、その改正された品確法に基づき、発注者を支援するため、「発注関係事務の運用に関する指針」いわゆる運用指針が運用開始されたところです。今後、改正された品確法の理念が現場で実現されるためには、その基本理念がしっかりと現場に根付くことが重要であり、国はもとより、都道府県や市町村を含む全ての公共工事の発注者が運用指針に則って適切に発注関係事務を行い、発注者としての責任を果たしていくことが必要であるとされています。
　今回、受験した公共工事品質確保技術者資格制度は、発注関係事務を適切に実施することができる者を育成することを目的に、全建が平成20年に創設・運用した資格制度です。改正された品確法関係の県の調整役としての業務に従事した経験などもあり、また現在は直接、工事の総合評価落札方式の審査実務に携わっていることから、これまでの経験の整理及び技術の習得、これからの業務での活用を図るため、公共工事品質確保技術者資格に挑戦しました。
　資格区分は、経験年数等により（Ⅰ）と（Ⅱ）の２種類に分けられますが、品確技術者（Ⅰ）を受験しました。試験は、６月頃に論文の事前提出があり、10月頃に面接試験が行われました。

　提出する論文の留意点
　提出論文では、論文１と論文２の２つのテーマがありました。論文１のテーマは、記載した業務経歴の中の経験事例について、事例の概要とその課題、それに対する工夫や苦慮した点についてでした。論文２では、（論文２のテーマは毎年変わります）改正された「公共工事の品質確保の促進に関する施策を総合的に推進するための基本的な方針」のポイントのひとつである「発注者の責務の明確化」についての内容の記述とそれについての考えを記述するものでした。実際には、論文１では、自分の経験の中で、当時県で導入を計画していた地域維持事業の包括発注について記述しました。その時の立場、課題を述べ、発注方法の検討や、議会や関係団体との意見交換に時間をかけ、苦慮しながら、ようやく理解を得るに至った経緯を記述しました。論文２では、テーマに関する最新の情報を収集し、概要を説明するとともに、それに対する自分の考えを記述しました。今回では、改正された品確法の運用指針の中で、「必ず実施すべき事項」である歩切りの根絶について、実施されていないと疑念される自治体や変更設計のやり方など明確でない事項については、今後、発注者協議会や事業主管機関などと協議しながら進めていく必要があるとの意見で結びました。

　面接試験における傾向と対策
　面接試験は、質問形式で行われ、基本的には、論文に記載した内容について聞かれたと思います。反省としては、記載内容については、十分に熟読し、覚えておく必要があったと思います（面接時に、頭がまっ白になったので）。また、面接時には、提出した書類等を見ることができないため、自身の経歴は、頭の中でしっかりと整理しておくことが必要だと思います。

　受験者へのアドバイス、注意点、励まし等
　論文については、提出が年度早々になりますので、準備時間がないことに留意が必要でありますが、資料を見ながら書けますので挑戦はしやすいと思います。論文等の書類審査の後、９月に面接試験の通知があります。面接試験については、それまでに時間がありますので、想定質問で準備すると良いと思います。平成28年度のHPによると、受験者は、コンサルタント関係や官公庁が多く、品確技術者（Ⅰ）は50歳以上、（Ⅱ）は40歳から50歳以上の方が多かったようです。28年度の合格率は、80% 以上のようでした。
　この資格に挑戦することによって、品確法について、理解が深まり、今後の業務に役に立つと思われますので、ぜひ一考してもらいたいと思います。公共工事の発注関係などの経験がある人であって、準備をして挑めば、必ず合格できると思います。

　 「公共調達の達人」への道

　〔取得した資格〕
　　公共工事品質確保技術者（Ⅰ）
　〔資格取得年度〕
　　平成２８年度

岩本　直登（いわもと　なおと）
相模原市　都市建設局　道路部
緑土木事務所　参事（兼）所長

　受験の動機・経緯
　私は、平成20年度から技術監理課、平成23年度から土木積算監理課に所属し、本市における発注関係事務の統括的な業務を指導的立場で担当し、総合評価落札方式の拡大推進や発注関係事務の各段階の適切な実施に向け取り組んできました。また、平成25年度より国土交通省大臣官房技術審議官からの委嘱を受け現在も引き続き『総合評価方式の活用・改善等による品質確保に関する懇談会』に委員として、参画しております。
　このような経緯から実感していることは、公共工事の工事目的物は一般の小売商品等と異なり、調達時点で品質の確認が出来ないという特性であります。このため、その品質確保にあたっては、入札・契約時点において、発注者は個々の工事の内容に応じて適切な技術力を持つ企業を競争参加者として選定するとともに、入札参加者について技術力も十分活用したうえで、価格と品質の総合的に最も優れたものを落札者として決定することが必要となることから、品質の確保に資するための公共調達の重要性を強く感じております。
　今後も、関係機関や有識者が一体となって社会情勢の変化を敏感かつ的確に捉え、事業の特性、発注者の体制、民間企業の技術力等を考慮した入札契約制度の改善を図り、建設業界全体の活性化に向けて微力ではあるものの「貢献したい」との思いから、公共工事品質確保技術者（Ⅰ）を受験しました。

　提出する論文における傾向と対策
　最初に、公共工事の発注関係事務（A）と総合評価落札方式に係る発注関係事務（B）に指導的立場でそれぞれの実務経験年数が受験資格要件となり業務経歴書に記載することとなります。この経歴に基づき、課題論文２種類（Ⅰ、Ⅱ）を記述することになるため、経歴を記載する際に受験資格要件に合致する自身の業務経験を具体的に整理することで、課題論文の内容構成がスムーズに行えると考えます。
　私が受験したときの論文Ⅰのテーマは、受験資格要件（B）における公共工事の品質確保についての実務経験に関することであり、これから発注する下水道工事（シールド工事）の現場状況と工事の特性（規模や技術的難易度等）、並びに事業期間やコスト増などの課題を提起しつつ、この課題に呼応し「品確法」の理念に基づいた入札及び契約方法の選択（設計・施工一括発注方式）など、発注前の各種取組みを記述しました。
　論文Ⅱは、「改正品確法」の改正ポイント（１．目的と基本理念の追加２．発注者責務の明確化３．多様な入札契約制度の導入・活用）を念頭に、一体的に改正された「入契法」や「建設業法」及び追随して改正された方針や指針など全貌を捉え〔参考資料：発注関係事務の運用に関する指針（解説資料）平成27年１月30日〕、これまでの業務経験により、自身の考えを整理し記述することが望ましいと考えます。

　面接試験における傾向と対策
　経歴書及び論文Ⅰ・Ⅱの記述にあたり、自身の業務経歴での課題テーマに対し、「公共工事の品質確保の促進」を図るため、目指す成果に向かってどの時点でどのように取り組んできたのかを体系的かつ具体的に整理すること、つまり論文を作成する際、入念に理論構成を行うことで、確認審査に係る面接試験については、復習程度で応答できるものと考えます。
　公共工事品質確保技術者としての口頭試問は、自身の実務経験、知識、適格性等を問われるため、「品確法」全般にわたっての時代背景と変遷を理解する必要があります。
　はじめに、公共工事の特性を捉えるとともに「品確法」が制定された背景についてであります。承知のこととは存じますが、公共工事の成果物は、現場単品生産であり、施工条件・位置・時期、施工者の技術力等により品質が異なることが避けられず、完成して初めてその品質が判明するという特性があります。従って、契約時点では、完成物を確認することが出来ません。
　また、従前の入札・契約は、価格競争を原則としているため、低価格入札や談合などの問題が発生し、手抜き工事などの可能性が高くなり工事目的物の品質を脅かすなどの課題がみられました。このことを背景に、平成17年３月に「品確法」が制定され、「価格と品質で総合的に優れた調達」への転換が図られたところであります。
　次に、平成26年６月に「品確法」が改正された背景及び改正ポイントについてですが、
　　① 近年の建設投資の急激な減少などによる、建設企業の疲弊、技能労働者等の賃金の低下、就労環境の悪化に伴う
　　　　若手入職者の減少などの問題
　　⇒ 「将来にわたる公共工事の品質確保と中長期的な担い手の確保等」
　　② 発注者側においても職員が年々減少し、発注関係事務を適切に実施できない懸念
　　⇒「発注者の責務の明確化」
　　③ 現在の入札及び契約の方法は、民間の技術力を最大限活用できていないことや地域の建設産業の疲弊や担い手
　　　　不足当の構造的な問題に十分対応できていない課題
　　⇒ 「事務の特性に応じて選択できる多様な入札契約方式の導入・活用」
となります。

　受験者へのアドバイス、注意点、励まし等
　近年の日本は、時期や場所を問わず地震やゲリラ豪雨などの自然災害が頻発し、自治体職員が中心となって対応していることや、技術の継承・職員確保にも苦慮されるなど、全建会員の皆様が悪戦苦闘していると感じております。
　このような中、会員皆様の日々の業務において、公共工事における契約の相手方により、成果物の良否に影響があることを実感されている方が多いと思われます。そのように感じている方は、ぜひ「公共工事品質確保技術者（Ⅰ）（Ⅱ）」の受験にチャレンジしてはいかがでしょうか。受験に向けての知識の吸収は、公共事業に携わる者として、建設業界全体への貢献が発現され、自身のスキルもさらに大きく成長することが可能となります。
　最後になりますが、試験の傾向と対策について、長々と述べましたが、面接試験のアウトプットを中心に「品確法」の成り立ちから理解し自身が業務で経験した発注関係事務のどの部分を強調するのか十分に整理して取り組むことが良いと考えております。