土木構造物標準設計 Q&A

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 標準設計で収録しているブロック積擁壁は、「道路土工−擁壁工指針」における経験に基づく設計法に位置づけられている ブロックの控長35cmの通常の擁壁を対象にしています。
 ブロック積擁壁は、のり面勾配が1:1より急なもので、土の崩れを防ぐなど主としてのり面の保護に用いられ、背面の地 山が締まっている切土、比較的良質の裏込め土で十分な締固めがされている盛土など、土圧が小さい場合に適用します。 そもそも、この種の擁壁は、コンクリート擁壁のように土圧を積極的に支持し壁体が一体となって働くものでなく、個々の積 ブロック相互の噛み合わせや擁壁背面の裏込め土などによりその位置を保っているものです。そのため、ブロック積擁壁の破 壊の多くは、コンクリート擁壁のように全体としての転倒あるいは滑り出しによるものと異なり、基礎地盤の支持力不足によ る沈下又は摩擦力(積ブロック相互の噛み合わせ)の不足している部分がはらみ出すことなどによって生じるのが一般的です。
 このように、ブロック積擁壁は、その安定機構あるいは破壊形態が複雑なため、他のコンクリート擁壁と異なり確立された 設計法がないのが実状であり、土工指針で言う経験に基づく設計法と位置づけているのもこのような理由からです。
 したがって、ブロック積擁壁の適用については、これまでの経験・実績の域を超えることはできず、前述のように、作用土 圧が小さく、法面の保護として採用することが肝要です。当然、適用できる高さについても自ずから制約が生じます。高さに 対する適用限界については、ブロック積擁壁の設計が経験的に行われているので明確な数値は示されておらず、擁壁工指針で はこれまでの経験・実績等を考慮して高さ7mを適用の限界としています。一方、標準設計においては、施工場所が不特定で あること、ブロック積擁壁と同じような場所に採用されるもたれ式擁壁などのようなコンクリート擁壁の方が安定性に優れて いると考えられることなどを勘案して、従来どおり高さ5mまでを対象にしています。ただし、この高さは一般的な適用限界 高さを示すものではなく、標準設計の収録範囲であることに注意して下さい。
 次ぎに大型ブロック積擁壁ですが、このタイプについても通常のブロック積擁壁と同様に、独自の設計法は確立されていま せん。そのため、擁壁工指針では、「控長の大きいブロックで鉄筋コンクリートなどを用いてブロック間の結合を強固にした 形式のものは、ブロックが一体となって土圧に抵抗するために、もたれ式擁壁に準じた構造と考えてよい」とされています。 ここで言う、もたれ式擁壁に準じた構造と考えてよいとは、同じ設計にするということまでは言及していないことです。大型 ブロック積擁壁は、一体化してもそれなりの柔の構造と考えることができ、背面の地山に地耐力があれば地山へのもたれかか りが即不安定になるとは言えないと考えられます。このため、条件によっては井げた組擁壁と同様な設計が可能な場合もあり、 現地の地盤条件、地山の条件等を勘案し、合理的な設計に心掛ける必要があります。


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