■技術資格試験合格体験記

  技術士第二次試験への挑戦

 〔取得した資格〕
  技術士(建設部門 港湾及び空港)
 〔資格取得年度〕
  平成17年度


濱田 泰広(はまだ やすひろ)
国土交通省 中国地方整備局
宇野港湾事務所 工務課長
受験の動機
 私は、技術系(土木)の国家公務員として採用され、中国地方整備局で日々仕事に邁進しておりますが、いつの頃からか自問自答するようになりました。
 その問いは、「技術系職員としての能力を持っているか?」と言うことです。そしてその答えは、「むしろ行政の手続きを実施する行政マンなのか・・・」でした。
  技術系職員としての能力に全く自信がなく、仕事の関係上、受注業者のコンサルの方々と数多くの打ち合わせ等を行って来ましたが、コンサルの方は、ほとんど技術士の資格を持っておられるのに対し、発注者であり、むしろ検討内容の方向性を指導し、判断する立場の自分が何の技術的資格も無く、わかった様な事を言っている。それで良いのか?
 そのような単純でストレートな気持ちから技術士へのチャレンジを決めました。
筆記試験にあたり
 平成19年度より大幅に試験方法が変わりましたのでお役に立つかどうかわかりませんが、私の受験時を振り返りポイントを少し述べさせて頂きます。
 最も大事なのは、モチベーションをいかに保ち続ける事ができるかだと思います。
やはり筆記試験の勉強は、専門論文、建設一般論文の上に択一試験の勉強と、幅広い知見を得る事や論文作成の準備にかなりの期間がかります。仕事をしながら時には残業で遅くなるなか、どうしても勉強し続ける気持ちや絶対合格するんだという気持ちが薄らいで行きます。
 私の場合、合格する事への執念と信念を持ち続けるため、「自分は合格するんだ。」  と常に自分に言い聞かせ、仕事から帰った疲れている夜に勉強するのではなく、頭のスッキリしている朝に、1時間程早起きし、毎日50分の勉強をする様に努力しました。
口頭試験にあたり
 口頭試験に際しては、あらかじめ自分で想定質問事項とその回答を作成しました。
 質問事項は、技術士受験の参考書を何冊か見ると口頭試験時に出る質問がある程度 想定出来ます。私への質問は、記憶を辿ると、技術士受験の動機、技術士法から2問程度、専門である港湾・空港関係の現状や課題に対する質問が2問程度だった様に思います。やはり、ある程度予想し、その回答を作って練習しておけば、慌てる事無く、明快に落ち着いて回答出来ると思いますので、事前の準備は、万全を期す事が口頭試験をクリアーする最も大事なことと考えます。
受験者の方へのアドバイスになれば
  あたり前の事ですが、私たちは、勉強を本文とする学生ではなく、仕事を持つ社会人です。だから良い仕事をする事が本来の目的です。技術士受験は、良い仕事をするための自分へのチャレンジのひとつと考えて下さい。確かに日々の仕事に追われるなか、スキルアップとしての技術士受験は大変だと思います。しかし、技術者として自分にプライドと自信を持つため、そして他の人に少なくとも技術者として真剣に取り組んでいる姿勢と能力は、技術士を取得することにより伝わるものと確信しています。
  技術士となるためには、一定期間の地道な毎日の勉強が必要です。家庭サービスや日々の仕事等多忙な受験生活を想像されると思いますが、絶対に合格するという強い信念と モチベーションを保ち続ける事で必ず合格できると信じて下さい。そして技術士となられ、いっそうご活躍される事を期待致します。 私も新たなチャレンジに前進して行きたいと思います。
特に参考となった出版物(名称、出版物等)
  何を参考に勉強するかも効率的に勉強する為には重要だと思います。
  私は、「国土交通白書」や「日系コンストラクション」、雑誌「港湾」などを試験前の数ヶ月間、目を通し、論文のテーマとなるポイントを絞り込みました。

  あなたも技術士に挑戦!

 〔取得した資格〕
  技術士(建設部門 道路  総合技術監理部門)
 〔資格取得年度〕
  平成平成19年度 平成20年度


佐藤 和義(さとうかずよし)
秋田県建設交通部
港湾空港課
受験の動機
 受験の動機は、「自分で思い描く技術者像に少しでも近づくためのアクションの一環にしよう」と考えたことです。 キッカケは、数年前に職員研修の担当者となったことでした。研修企画の前提となる「技術者像」を自分なりに考えるなかで、自らの現状とのギャップを感じ、何らかの行動が必要という気持に駆られました。 そこで、技術士取得への挑戦を足掛かりに、目標とする像に少しでも近づこうと考えました。
筆記試験における傾向と対策
 筆記試験の対策としては、まず次の二つを中心に取り組みました。
 @専門知識の再整理:曖昧な記憶になっていないか確認し、最新の情報も取り入れる。
 A社会との関係整理:社会的な問題・課題と自分の専門分野の関連性を整理する。
 特にAは、技術は常に社会との関係の中で発揮されるものと考え、日頃から社会的な課題について「社会(地球)全体→建設分野→専門分野」といった階層構造を意識して考えをまとめ、「マイ・オピニオン集」を作成することに取り組みました。 これによって、社会全体と建設分野や専門分野の関係性や、社会的課題に対する技術者としての「自分の考え」を養うのに役立ったと考えています。
 また、過去問題を分析し、要求されているテーマや論文構成を把握することも欠かせません。論文テーマを、過去問題や社会経済的に重要な課題、国の重点施策からいくつか想定し、それについて実際に論文を作成することも基礎的な対策として実施しました。
口頭試験の対策
 平成19年度以降の口頭試験のポイントは、技術的体験論文の作成と説明、そしてそれを中心とした質疑応答と考えました。技術的体験論文の作成では、アピールしたい内容に絞り込むことに心がけました。 その際、図や表をうまく活用することがポイントと考え、時間をかけて入念に作りこみました。字数の調整ができますし、プレゼンも図表を中心に行うことを想定しました。プレゼンは、事前に要点をまとめ実際に声に出して練習を行いました。不安要素を取り除くことで、本番でも落ち着いて行うことができました。
 また、口頭試験に臨むにあたっては、「人と技術に対する謙虚な姿勢」を基本姿勢としました。具体的には、相手の質問をよく聞き、簡潔に分かりやすく説明する。技術による正負両面の社会への影響に目を配る。技術的に知らないことは、素直に「勉強不足です」と言う。これらは、実務で要求されていることと同じと考え、日常業務の中で実践を心がけました。
口頭試験対策は、実務の中でOJTにより習得していくことが基本だと思います。
受験者へのアドバイス
 資格取得への挑戦を通じて、業務経験を整理し、自分自身を振り返ることは、新たな成長へのステップにつながると思います。ですから、受験資格が得られたら、ぜひ若いうちから技術士取得に挑戦することをお勧めします。 この試験は、長丁場なので、モチベーションの維持が大事です。技術士として責任ある立場で社会に貢献する姿をイメージしながら、「絶対に取得する」という気持ちを持ち続けることです。私自身、技術士取得により、一定のレベルを認定されたことは何よりも自信につながったと感じています。皆さんも、技術者としての発展戦略の一環として、技術士取得に挑戦してみてはいかがでしょうか。

  若手こそ技術士試験に挑戦

 〔取得した資格〕
  技術士(建設部門 道路)
 〔資格取得年度〕
  平成19年度


児玉 博史(こだまひろし)
福島県土木部道路整備課
副主査
受験の動機、経緯
 私が公務員技術者として社会人になった頃、職場の上司から、公務員技術者は行政のプロフェッショナルであり、土木技術者のプロフェッショナルでなければならないと教えていただきました。このときに自分の目標として掲げたのが技術士試験への挑戦でした。
 公務員技術者には、多様化したニーズに対応した社会資本整備を行うため、高い技術力・コスト感覚・説明責任などが求められていますが、同様に、技術士試験にも高い技術力や専門知識はもちろん、問題解決能力、文章説明能力などさまざまな能力が求められています。
 私が経験年数を積むにあたって特別に行ったことはありませんが、日々の業務で目的意識を持ち、常に解決方法を検討し、県民への説明責任を果たすという行政としての基本を意識して業務を行ったことが、結果的に良い試験勉強であったのだと思います。
筆記試験における傾向と対策
 筆記試験に必要なことは、時代のニーズと専門知識を如何に習得し、自分の意見として述べることができるかに尽きると思います。
 具体的な論文対策ですが、私を含めてあまり長い文章を書くことが得意でない方は、はじめに合格者の論文を読むことをお勧めします。最近は合格論文集を復元した参考書も書店で入手が可能です。何度か読むと、起承転結の書き方もわかりますし、60点の合格論文と90点の合格論文の違いも自分なりに判別することができるようになると思います。
 例として「〜についてあなたの意見を述べよ」という問いには「現状と一般論」+「問題点」+「自分の意見(具体的な対策)」+「今後の課題」という一連の流れに対して、いかにして自分なりの解答をまとめるかが重要となります。
 また、経験論文については、発生した問題について、「なぜそのような対策を行ったのか」、「対策の結果はどう判断されたか」、「その根拠は何か」、「対策後の検証」などを整理することが重要です。日々の業務で行っている判断の根拠を再確認して下さい。
口頭試験における対策と傾向
 自分の経験論文について、要点を整理しておくことが重要です。平成19年度から経験論文が口頭試験の基礎資料として採用されたことから、経験論文に対して深く理解する必要がありますので、技術的知識、判断した根拠(基準・法律・データなど)を再度確認しておくべきでしょう。試験管は「なぜそう判断したの」「・・・については○○と考えるのではないのか」という質問が多いようですので、自分なりの想定問題を作成しておくのが良いでしょう。口頭試験に100点の解答はありません。あなたが日々の業務で県民へ説明するときに、いかにわかりやすい言葉で、わかりやすい流れで説明しているかを考えていれば、それが一番の口頭試験対策です。
 また、最新の技術や政策について聞かれることもありますので、筆記試験が終わったからといって油断せず勉強を継続してください。
受験者へのアドバイス、注意点、励まし等
 若手技術者へのアドバイスとしては、経験年数=勉強期間となる業務を心がけることで、短い経験でも技術士試験対策になるということです。「まだ早い」「来年受験しようかな」ではなく是非今年挑戦して下さい。
 技術士の資格取得は技術者の一つの通過点です。私も技術士という資格にふさわしい技術者を目指し、日々自己研鑽を続けていこうと考えております。
特に参考となった出版物
・国土交通白書 国土交通省
・技術士第二次試験建設部門論文集【必須・専門論文集】 技術士受験サークル

  セールスポイントを作る

 〔取得した資格〕
  技術士(建設部門 道路)
 〔資格取得年度〕
  平成18年度


大井 大輔(おおいだいすけ)
愛知県建設部道路維持課
企画調整グループ
受験の動機、経緯
 そもそも公務員も行政を行う資格の一つだと思っているのですが、現実には業務遂行にあたり、随所で相当厳しい風当たりがあるなあと実感しています。
 とはいえ、やるからには公務員という自分の仕事に誇りやプライドを持ちたいという思いも強くあり、今ある環境を嘆く前に、セールスポイントを作り、少しでも技術者として受け入れられて仕事に臨みたいと思い受験しました。
 既に知識や経験が豊富で力試しに受験する方も居られますが、自分の場合は完全に格好重視です
筆記試験対策
 ぜひ一度、試験内容を眺めていただきたいです。深い科学的知見や難解な計算能力よりも、広い見識をバランス良く持ち、目の前の業務に対する工夫を行っているか。それを第三者に分かりやすく説明できるか。この工夫姿勢と説明力が問われるのだと思います。
 事前に想定問題と答案を何題か準備しましたが、特に注意したのは、@ヤマを張るA「技術を知っている」ではなく「技術を使っている」という切り口で組み立てるB鉛筆で字を書く、の3点です。
 ヤマを張るためには、建設を取り巻く環境を読んで出題傾向を絞らねばならず、自然と全体像を見ることになります。また、原稿はパソコンで作っても、必ず手でも書くことです。時間配分の参考になるし、早く多くきれいに文字を書くには何より握力が必要です。
口頭試験対策
 試験制度のなかで一番きついのが、筆記試験から筆記合否発表までの数ヶ月です。筆記合否発表から口頭試験までは時間がないため、筆記試験に合格しているかどうか分からないなか、口頭試験対策する必要があります。自分にとっては、この期間のモチベーションの維持が最大の課題でした。とにかく筆記試験後に休憩を入れたら緊張感がなくなると考え、筆記試験を振り返るとか、毎日僅かでも問題に接するよう心がけました。
 そして口頭試験当日ですが、絶対緊張します。試験官もこちらが緊張していることは折り込み済みなので、むしろ正直に緊張してしまえば良いと思います。自分も前の晩は眠れませんでしたし、会場が近づくに連れ、頭の中も顔もどんどんシロ〜くなっていきました。
 内容的には、年齢が若いからか筆記試験や経験論文が本当に自分で考えた答案なのか確認するような質問もありました。なかには挑発質問や意地悪質問もありましたが、とにかく背伸びをしないことが重要だと思います。知ったかぶりすると、どんどん自分で墓穴を掘ることになります。また、主張を押し通したり、議論を始めるのも得策ではないと考えます。時には素直に質問の意図を確認したり、分からないと言っても良いと思います。(連発には気をつけましょう!)
 口頭試験は性格や雰囲気、言葉遣いから表情なども伝わります。口述内容もさることながら、最も必要なのは本気で合格したい気持ちが伝わるかどうかです。
・受験者へのアドバイス、励まし等
 自分の経験上、仕事が忙しい時の方が、頭が回転していたせいか、勉強する気にもなりましたし、はかどりました。また子供が小さかったため、帰宅後は家では勉強せず、近所のマンガ喫茶へ行き勉強しました。 勉強しやすく居心地のよい環境を見つけたことは、勉強嫌いの自分にとっては、最大の勝因だったと分析します。(勉強時間が多かったのか、某A級スナイパー漫画を読む時間が多かったのかは微妙ですが・・・) あと、カミさんと子供たちの理解があった自分は、きっと幸せモノです。→強いてアドバイスするなら、そう思いこむことです。信じる者は救われる(笑)
特に参考となった出版物
 論文添削、技術士受験を応援するページ(HP)

  真に必要な勉強時間で効率よく!

 〔取得した資格〕
  技術士(建設部門 道路)
 〔資格取得年度〕
  平成20年度    


小川 秀史(おがわひでし)
愛知県建設部
尾張建設事務所
筆記試験における対策
 いつの間にか技術者人生の約2/3を経過し、日常業務に流され気味に日々過ごすなか、これまでの経験を何か形に残し、技術者としての視野を広げておきたいと感じていました。 こうしたなか、今回の試験制度の改正(筆記量の削減)は、筆記が苦手だった私にとって大きなチャンスであると考え受験を決意しました。 一次試験から筆記試験、口頭試験を通じ、技術に関する体系的な知識を身につけることができたと感じています。また、受験を通して多くの方々と交流でき、良い刺激を得ることができました。
試験における傾向と対策
  試験制度の改正に伴い、筆記試験のテクニックは一層重要となってきており、方法を間違えると難しい試験だと感じました。しかし、論文の書き方は千差万別!私は、自分に適した添削講座等を見つけ、多くの合格者の意見を取捨選択しながら、 自分の論文スタイルの確立・修正を行っていくことが重要だと考えます(私もチェレンジ初年度は全くの自己流・自己満足で撃沈!)。以下、私が心がけた論文の書き方です。
 一般論文での「論理的考察力と課題解決能力」とは何か。私は「現状」から「課題」「解決策」までの起承転結の流れをしっかり書くことに留意しました。特に、「課題」の抽出に至る根拠が最も重要だと考えました。 専門雑誌や道路局のHP等から、なるほど!と思える説得性のある論理的な表現箇所を発掘し、ブロック化して暗記しました。「解決策」はごく一般的なもので書きました。
 専門論文での「専門知識と応用能力」とは何か。私は一般的な「解決策」をさらに深堀りして記述するよう心がけました。「一般的な解決策としては・・・。 しかし、この解決策にはこんな課題があって、今後こうした対策も必要だ。」といった感じです。深掘り策としてはインターネットなどを活用し、やや奇抜的な対策も集めました。
体験論文における対策
 公務員技術者の場合、体験論文のネタの発掘が最も苦労する点ではないかと思います。私も一般的な日常業務のなかから、当初は全く思いつきませんでした。しかし、意外なところに転がっているものです。身近な技術士等に相談してみることが近道だと考えます。 口頭試験での体験論文のプレゼン中、「私が、特に着目した点は・・・」と述べた時の試験官の反応からも、「自分の創意・工夫の一言」が言えるかどうかが鍵であると実感しました。逆にあまり細部にこだわる必要はないのではとも感じました。
口頭試験における対策
 私の場合、技術に関する見識として、道路構造令から多くの質問を受けました。「構造令の位置づけは」「構造令の目的は」「道路の役割と機能は」「道路の区分は」等、道路構造令の第T・U章は要チェックです。特に「道路の役割と機能」は専門論文でも多く引用しました。 また、一次試験における自分の専門分野の過去問もチェックするべきだと思います。さらに、「全国の道路整備の状況について述べなさい」「高規格幹線道路および地域高規格道路の役割は」「それらの計画・供用延長は」「将来交通量推計の見直しの内容は」等々、 日常業務において漠然と認識している事柄について突然聞かれると、緊張もあってなかなか言葉にならないものです。一言で答えられるよう、短めの想定問を数多く準備することが重要だと感じました。
 口頭試験での答え方としては、なるべく簡潔に(そっけないぐらいに)一問一答!多くの質問をしてもらうように心がけるべきだと思います。
受験者へのアドバイス等
 この試験は、いかにしてモチベーションを長期間維持するかがやはり鍵だと思います。私は朝型の生活に切り替え、晩酌後は子供達と一緒に極力早く就寝することに専念し、朝の1〜2時間+通勤時間を勉強時間にあてました。 技術士試験は山登りと同じ。ルートさえ間違えなければいつかは頂上に立てると信じ、後戻りしないようにだけ考えました。

  公務員技術者にとって「技術士」とは?

 〔取得した資格〕
  技術士(建設部門 河川、砂防及び海岸・海洋)
 〔資格取得年度〕
  平成19年度


佐藤 公康(さとう きみやす)
愛知県建設部砂防課
企画・砂防グループ
受験の動機・経緯
 「受験の動機」と問われると少々困惑します。正直に申せば「ひとに誘われたから」と言うのが本音です。
 公務員技術者にとっての技術士資格は、職務上有利な点は少ないかもしれません。おそらく多くの公務員技術者が感じているように、私も以前は技術力さえ備えていれば公務員にとって技術士資格は必ずしも必要ないと考えていました。
 誘われるままに受験申込みを済ませ、一応参考書も揃えました。何の予備知識もなく開いた1次試験の参考書は、私にとっては意外な内容でした。
 「技術者に求められているのはこうした“基礎知識”であり、“専門知識・技術”、“政策・法令の知識”であり、“倫理観”であったのか」と新鮮な刺激を受けました。
 そして、普段私たちの仕事にお手伝いくださるコンサルタントの技術士の方は、こういう知識や倫理観を基にさまざまな提案をしてくださっていることを知りました。
 現在、私たちの仕事のなかで、調査・設計の過程ではたいていコンサルタントさんの力を借りています。コンサルタントに所属する技術士さんが高い技術力・倫理観を持って為された提案も、最初にそれを企画し、最後に現場で形にするのは、主に発注者側の技術者です。「真に役立つ社会資本を構築するためには、私たち公務員技術者も調査・設計を担当される技術者同様、「技術士」として求められる知識、技術、倫理観を持つことが必要なのではないか」次第にこう考えるようになりました。
 私の場合、受験勉強を始め「技術士」に求められているものを知るにつれ、受験の意思が固まったといえるでしょう。
筆記試験における傾向と対策(合格するためのポイント等)
 筆記試験では、参考書として「必須・専門科目論文事例集」を購入しました。また、「SUKIYA・・塾」のHPが
大変参考になります。
 論文集に掲載された過去問の回答例を参考に、SUKIYA・・塾で勧められている「骨子法」でまとめなおし、論文作成の練習を繰り返しました。
 試験では、午前の建設一般は2.5時間で1題の論文を書くのに対し、午後の専門は3.5時間で2題の論文を仕上げる必要があります。午前は下書きをして清書する余裕がありましたが、午後は時間的に厳しく、下書きなしで答案用紙を埋めることとなり、文字数の調整に不安を感じました。論文全体の文字数を考えるだけでなく、練習段階から骨子ごとの文字数を把握しておく必要があると感じました。
口頭(または製図)試験における傾向と対策(合格するためのポイント等)
 筆記試験までは受験資格の確認。口答試験こそが技術士試験の本番ではないかと思います。それ故、想定問答の作成等、受験準備には一番力を入れました。
 試験の様子や事例が収集しにくいので、受験体験をお聞きしたり、想定問答の作成にご協力いただいたりと、先輩技術士に相当力をお借りしました。
 制度改正後、試験の最初に「職務経歴を5分程度で」「体験論文の概要を10分程度で」と問われることが多いようなので、原稿を作成して練習しておくことが必須です。
 あと、体験論文の内容について論拠を明確にしておくこと。詳細に論文を見直すと、案外根拠が不明確なもの、普段文献を頼りにうろ覚えになっている数式などが多かったです。
受験者へのアドバイス、注意点、励まし等
技術士資格に興味のない方、一度参考書を覗いてみてください。もしかしたら、心境の変化が起こるかも?
特に参考となった出版物(名称、出版社等)
・「技術士2次試験必須・専門科目論文集 建設部門」(ブイツーソリューション)
・「SUKIYA・・塾」(HP)

  「いつか」ではなく、「今こそ」挑戦を!

 〔取得した資格〕
  技術士(建設部門 河川、砂防及び海岸・海洋)
 〔資格取得年度〕
  平成19年度


小西 英司(こにしえいじ)
大分県別府土木事務所道路課
主幹
受験の動機、経緯
 県に入って10数年、県職員で技術士をとる人が増えてきて、いつか挑戦しようと思っていましたが、多忙を理由に先延ばしにしていました。 平成17年度に一念発起して1次試験を受験、平成18年度に2次試験に挑戦しましたが、全くの情報不足・準備不足で惨敗しました。 平成19年度は前年の失敗を繰り返すまいと準備してのぞみました。
筆記試験における傾向と対策
 筆記試験の問題は、過去の問題や最近の話題からある程度予想はつけられますので、関心のあるテーマやできれば得意な分野でまとめられるような予想問題を数題準備しておくと良いと思います。それも一から回答を考えるのは大変ですので過去の問題の回答例を参考にしながら、新しい情報や関連する国土交通白書の内容を入れながら自分なりにアレンジするのが良いかと。ポイントはしっかりと押さえておかなくてはいけませんが、最後のまとめは自分の得意な分野のことを自分の言葉で書くことができればアピールできると思います。
 また19年度から経験論文の提出が後になり筆記試験に集中して準備できますし、試験時間が長くなりましたので、最初に箇条書きで組み立てをしっかり作ってから回答しても余裕で間に合います。
口頭試験における傾向と対策
 口頭試験での試問事項は決まっていますので、ある程度質問は予想できます。想定問答を作って練習するのは当然ですが、特に経験論文の内容についての質問が多いので、根拠となることは基本的なことから復習しておくべきです。ここを聞かれるとつらいなということは必ず聞いてきますから、順序良く答えられるように準備をして下さい。緊張して早口になりがちなので、ゆっくりすぎるかなと思うぐらいのペースでいいと思います。
 一番避けるべきは質問に答えられず沈黙してしまうことです。相手の質問内容を確かめながら落ち着いて誠心誠意答えることが大切です。分からないこと、やっていないことはそのように答えて、その後に自分の考え方、今後の対応を付け加えるべきかと思います。
受験者へのアドバイス、注意点、励まし等  私の場合は1人で勉強しましたので情報収集に苦労しました。回りに勉強会があれば、ぜひ参加して下さい。
 また基本的なことですが、専門とする事項と経歴のリンクは勿論ですが、可能であれば筆記試験の内容も関連したものでまとめた方が良いと思います。自分の技術者としてのメインテーマや得意分野で勝負すべきです。申し込みのときから戦いは始まっていると思います。18年度はそれが分からず失敗しました。
 受験しようと決めてからは合格を目指して、また合格してからも継続研鑽のために情報収集、勉強するようになり、技術者としてレベルアップを図る1つのきっかけになりました。とにかく一度受けてみるべきです。そうすれば何をすべきかが見えてくると思います。
特に参考となった出版物
 「日経コンストラクション」等の建設関連雑誌、各協会誌やインターネットでの応援ページの情報等が役立ちました。また指南本はそれぞれ一長一短があるので、何冊かグループで購入するのが良いかと思います。

  自らの資質向上のために


 〔取得した資格〕
  技術士(上下水道部門 下水道)
 〔資格取得年度〕
  平成19年度


風間 健二(かざまけんじ)
前橋市水道局上下水道部
下水道建設課計画係技師
受験の動機、経緯
 私は、群馬高専土木工学科を卒業後、二十歳の春に前橋市水道局の土木系職員となりました。初めての職場で「今後、土木系職員としてさらなる飛躍を目指すためにも常に学ぶ姿勢が大事であり、資格取得もそのひとつ」とのアドバイスをきっかけに、二級土木、一級土木を取得しました。 その後、下水道建設課に異動となり、今日の社会・経済状況の急激な変化から下水道を取り巻く環境も変化し、その業務に携わる職員として、より専門的かつ高度な知識の習得が必要と考え、自らの資質向上のために技術士試験に挑戦しました。
筆記試験における傾向と対策
 平成19年度から技術士二次試験の試験方法が改正され、筆記試験のなかから五肢択一式と技術的体験論文(口頭試験に移動)がなくなり、必須科目では論理的考察力と課題解決能力、選択科目では応用能力を問う試験となりました。
【午前:必須】試験開始の合図に問題を開けると予期していなかったグラフと表が出現。「図表を参考にして、これまで実施してきた技術的対応とその効果を述べるとともに、今後の解決すべき課題を抽出し、その技術的対策について論ぜよ(1,800字以内)」となんとも改正内容に相応しい出題。図表から読みとれる傾向を『○年間で約○%減少』など具体的に表現し、その要因や背景を技術的対応と合わせて整理することで『論理的考察』をまとめ、次に理想の将来像と現状のギャップ、社会情勢の変化から課題を抽出し、その解決策を提案することで『課題解決』をまとめました。
【午後:選択】過去の出題から2問を想定していましたが、実際には、600字以内の回答で3問を選択、次に1,800字以内の回答で1問を選択と想定外の試験になりました。特に600字以内の回答では、1,800字以内のまとめ方に慣れていたため苦戦しました。
口頭試験における傾向と対策
 試験会場に入ると2名の試験官がおり、概ね40分の試験時間内に、「技術的体験論文」「部門に関すること」「技術士倫理」について質問することが通告されました。基本的に試験官は1つの質問でも、回答に納得するまでは、何度でも言葉や視点を変えて質問を続けてきます。途中で言葉に詰まり心が折れそうになることが度々ありましたが、落ち着いて質問の意図を理解し、丁寧に説明することを心がけていました。以下に私が経験した主な質問を紹介させていただきます。
【技術的体験論文】
経験論文について10分程度で説明して下さい。
(技術的提案について)オリジナリティはどの部分?
何か研究論文を寄稿したり、掲載された経験はありますか?
【部門に関すること】
過去の業務で印象に残っていることは何ですか?
何か失敗したことはありませんか?
【技術士倫理】
技術士とはどういうものですか?
技術士になろうと思ったのはなぜですか?
受験者へのアドバイス、注意点、励まし等
 私は試験勉強中に一度だけ、実際の試験と同様に回答を手書きで試みましたが、すぐ嫌になってしまい、パソコンで入力するようになりました。勉強の方法は人によって違うと思いますが、色々試してみるのも悪くないと思います。また、技術士試験は自分の考え方を自由に表現できる機会でもあるので、試験を楽しむぐらいの気持ちがあると心に余裕ができるかもしれません。(私には余裕がなくて楽しめませんでしたが・・・)
特に参考となった出版物(名称、出版社等)
・国土交通省、日本下水道協会、下水道事業団などの報告書等

  一級建築士取得も通過点


 〔取得した資格〕
  一級建築士
 〔資格取得年度〕
  平成16年度


矢尾 満(やおみつる)
石川県土木部営繕課
受験の動機、経緯
 私の動機と言えば、自分への挑戦であったと思います。ちょうど建築士を受験する前の年に自己啓発の研修を受講し、本気で取り組めば大抵の目標は必ず達成できることに気付き、 「やる!」と決意するかしないかで結果が決まる事を学びました。そして研修からの帰りの電車のなかで、現在の仕事に必要な一級建築士を取得すると強く決意したのでした。 私は、学生時代に機械工学を専攻し、就職後は設備職として営繕業務を行っており、建築学の参考書を読みながら二級建築士の資格まで取得したのですが、40才近くになり記憶力も減退し、 一級は到底無理だと思い諦めていました。そこでこの不利な条件下では、独学による勉強は非効率的なので、試験の1年前から民間の受験サポートスクールへ通うことにしました。
筆記試験における傾向と対策
 私が受験した当時は、学科が4分野(計画・法規・構造・施工)で設備がない時代でした。前半の計画・法規の試験時間が3時間では短く、計画と法規の時間配分がポイントだと思います。 私の場合は、計画25問を50分、残り130分を法規25問に大きく配分しました。法規は法令集を持ち込むことが可能なので、時間さえあれば全問正解できるのです。
しかし、建築基準法はただし書きや多岐条項に跨るなど条文1つを見れば解ける問題ではないので、法令集の引き方及び素早さが要求されます。よって日々の勉強で過去の類似問題をひたすら解きました。 これは、法規の分野のみならず、他の分野も同様に問題集を解くことは必要です。学科を勉強していて一番キツかったことは、数値を記憶することでした。
年を取るにつれて記憶力が悪くなっているので、 何度も何度も繰り返して覚える勉強をしました。最後に試験当日の体調不良などいろいろ予想外のことが起きるかもしれないので、合格ラインが70点であれば、安全圏の80点を目標にして取り組んだほうがいいと思います。
製図試験における傾向と対策
 製図試験も時間配分のポイントがあります。計画のエスキスに2時間、残り3時間30分で製図を行います。私は、設備職であるため、配置計画・平面計画を行った経験や実績が無かったので、結構、エスキスの練習問題をこなしても、 2時間ではなかなかでき上がらなかったのです。でも、製図は、書くだけなので15問程度の練習問題をこなしていくうちに、自然と作図速度がアップしており3時間30分で書き上げられるようになりました。 製図の練習期間は、学科試験終了日から2ヶ月程度と少ないので、仕事以外の時間をすべてエスキスや製図の練習に費やして、余裕の無い、苦しい日々だった事を今も覚えています。
受験者へのアドバイス
 試験勉強は、ちょうど1年前より行うのが一般的で、その長い期間、モチベーションを如何に持続させるかが、合格のポイントであると思います。具体的には、目標の明確化であり、資格取得した自分の将来イメージング、 また家族や上司および友人へ取得宣言を行うと良いでしょう。また、数年計画で取得できればという、逃げ道を作るのではなく、崖っぷちに立ったつもりで一発合格する気構えも必要でしょう。
最後に、どの資格も同じですが取得したら これで終わりではなく、通過点であるということを思っていただきたいです。私も次は、設備設計一級建築士を目標にしています。

  同じ土俵に立つ

 〔取得した資格〕
  一級土木施工管理技士
 〔資格取得年度〕
  平成15年度


北浦 直子(きたうらなおこ)
国土交通省 中国地方整備局
広島港湾・空港整備事務所
受験の動機・経緯
 自分は特別なの?・・・・公共事業では、受注者に対して一級土木施工管理技士の資格を求めているにもかかわらず、発注者である私は無資格であるばかりか、 監督指導する立場である事に疑問と「引け目」を感じたからです。
 「対等な立場で仕事に取り組みたい。少しでも議論が交わせるようになりたい」と思い、資格取得に取り組みました。
試験における傾向と対策
 何からとりかかれば良いかと・・・・とりあえず参考書を1冊買いました。(睡眠学習が災いし、ろくに開かず)当時、幼子を育てながらの共働きでしたので、まず、自力で学習することは無理だと早くから諦めました。(苦笑) そんな折、主人が書店で土木施工管理技士受験対策講座のチラシを入手してくれたのがきっかけで、まずは受験講座に申し込むところからはじめました。
 受講したのは平日の2日間コースでした。受験に費やす期間を約半年とすれば、そのうちの2日なら・・・・と思い、有休を取って参加しました。 実際に受講してみると、周りにも自分と同じく資格取得を目指している人がいることが分かり、励みになりました。また、覚えておかなくてはならない事もポイントを押さえて講義を受けることができ、充実した2日間を過ごすことができました。自力での学習ではここまでポイントを押さえることはできなかっただろうと思います。
 また、幸運にも現場監督業務を行える部署にいましたので、常日頃から実地試験に役立ちそうな案件がないか・・・・そういった目で現場を見ることも心がけました。現地の終わった工事の仕様書も読み返せるようにコピーをとり、手元に置きました。
受験者へのアドバイス、注意点、励まし等
 資格を取得し、受注者である現場代理人及び監理技術者の方と話をする際に、以前感じていた「引け目」は解消されました。しかし、経験に勝るものはないので、日々受験勉強で得た知識を風化させずに生かし続けることが大切だと感じています。私の場合、受験対策講座用に購入したテキストは今もずいぶん役に立っています。
 また、“一級土木施工管理技士を取得すれば、技術士の一次試験のうち、共通試験が免除できる”メリットがあります。私もちゃっかり免除を利用し、一次試験に合格することができました。☆今年は二次試験に再度挑んでみたいと思います☆
試験勉強の参考となるもの
 受講講座  財団法人 地域開発研究所  土木施工管理技士 受験対策講座 

  一級土木施工管理技士の受験対策

 〔取得した資格〕
  1級土木施工管理技士
 〔資格取得年度〕
  平成20年度


和田 誠(わだまこと)
国土交通省 中国地方整備局
港湾空港防災・危機管理課
沿岸安全係
受験の動機、経緯
 私は、現場で監督員を行っていた初期から「資格を持っている現場代理人や監理技術者を、無資格の監督員が指導、監督していいのだろうか」という素朴な疑問を持っていました。もちろん、出来形管理基準などは把握して監督していましたが、現場代理人や監理技術者に説得力を持った指導を行うためには、少なくとも「一級土木施工管理技士」の資格と知識は持つべきと感じていました。
 また、職場内にスキルアップの機運があり、その空気に後押しされたこともあって、一級土木施工管理技術検定の受験を決意しました。
試験における傾向と対策
 勉強の方法はコツコツやられる方や短期集中の方など多種多様だと思いますし、試験の傾向はテキストを確認して頂くとしまして、ここでは私が受験時に感じた個人的な試験対策を箇条書きで記載したいと思います。(皆様の参考になるかは自信がありません)
・得意な分野から勉強しよう!
 私は港湾関係の業務の関係上、「土工」の経験はほとんどありません。しかし、ほぼ全てのテキストは「土工」から記載しているかと思います。あまり知識のない分野は、なかなか勉強が捗りません。さらに急速にエネルギーを消耗し、開始時の高いテンションを急速に下げてしまうことがあります。その結果、受験を放棄してしまうかもしれません。
 そこで、テキストの順番は気にせず、得意な分野から勉強することで得意分野を確実に抑えることをお勧めします。
・落とされるのは学科試験ではなく、実地試験だ!
平成20年度の合格率は、(財)全国建設研修センターのホームページによりますと、学科試験が70.5%で実地試験は25.9%です。この数字が表すとおり不合格になる可能性が高いのは実地試験です!それに、学科試験はマークシートですからあやふやな知識でも得点は取れますが、実地試験は筆記試験のため、十分な知識が備わっていなければ、的確な回答を記載することは出来ません。そのため、学科試験に合格したからと油断せず、実地試験を本命の試験と思って勉強しましょう。
・試験では自信を持ってかつ最後まで諦めない!
 試験当日は自信を持って試験に臨むことが大切です。その自信はそれまでの勉強によって得られます。今までの努力を思い出しながら試験会場に行き、自信を持って受験しましょう。
 しかし試験では、思いがけない問題が出題されることがあります。そのような問題でも過去の現場での経験、いろいろな苦労をしてきたなかに答えがきっとあります。そういった現場での記憶を思い出して、最後まで諦めずに受験しましょう。
口頭試験における傾向と対策
 資格試験は「資格を取ることが目的ではなく、その知識を現場に活かすことが目的」だと私は考えています。ですから、これから受験される方だけでなく、受験に踏み切れない方は、「現場で良好な施工を行うためのステップとして資格試験の勉強する」「そして勉強の成果を現場に活かして良好な施工をする」という気持ちで積極的に受験勉強をスタートし、良好な社会資本整備の一翼を担うと思うことが重要ではないかと、私自身感じております。