■技術試験合格体験記

  技術士試験への挑戦

 〔取得した資格〕
  技術士(建設部門河川、砂防及び海岸・海洋)
 〔資格取得年度〕
  平成18年度


佐藤敏通(さとうとしみち)
福島県土木部
河川港湾領域ダムグループ
主任主査
受験の動機
 私が技術士を受験しようと思ったのは、業務のなかでコンサルタントの方と協議する際に、発注者としても対等な技術力が不可欠であり、それを証明するためにも技術士という資格取得が必要であると感じていたからです。
 また、職場の上司、同僚がこの資格に多数チャレンジしており、周囲が抵抗なく技術士を受験する雰囲気となっていたこともとても大きいと思います。
筆記試験における傾向と対策
 まず建設一般についてですが、やはり国土交通白書の内容を理解することが重要だと思います。今、社会資本を整備していくうえで何が問題となっているのか(現状の認識、課題整理)、その対策はどうあるべきかを自分のなかで整理しまとめていくことが必要です。
 また、白書の最初に記述されているテーマは最も重要であり、このテーマに対する回答は必ず準備していくことが必要です。 次に専門についてですが、日常業務を行うにあたり河川砂防技術基準等の専門書を熟読し、専門的な知識を自分のものとして身につけておくことが重要です。
 また、社会資本整備審議会の答申内容等、現在議論となっている最新の動向等についてもHP等を活用してまとめておくことが必要であると思います。
口頭試験における傾向と対策
 口頭試験(面接)の経験は二十数年ぶりだったこともあり、試験官の前に腰を下ろした瞬間に緊張で口のなかがからからになったことを思い出します。
 このため、試験官の質問に対する回答をきちんと頭のなかで整理し、あせらずしっかり回答することを意識しました。
 対策としては、予想質問を準備しておくことはもちろんですが、経験論文に記述した内容については、事前に十分に復習して臨むことが必要です。
受験者へのアドバイス、注意点、励まし等
 受験の際には、同じ仲間を多く作りお互いに情報の交換をするとともに、職場内の先輩技術士の方々に多くのアドバイスを受けることが励みになると思います。
 また、HP上で多くの情報を得ることができますので是非活用してください。
 試験が近づくにつれ、勉強時間の確保も大切となりますので、通勤時間や昼休みを利用するなど、少ない時間を有効に活用していくための工夫も必要だと思います。
 技術士という資格は、我々発注者側に立つ人間にとって、必ずしも必要とされるものではなく、それでも勉強しようと自分を奮い立たせることは決して楽なことではありません。
 しかし、勉強したことは自分の財産として必ず生きてくるはずです。あきらめずに何度もトライしてください。

  技術士を取得して課題解決に取り組もう

 〔取得した資格〕
  技術士(建設部門道路)
  技術士(建設部門建設環境)
  技術士(建設部門都市及び地方計画)
  技術士(総合技術監理部門)
 〔資格取得年度〕
  平成10、14、18年度、平成13年度


井澤清二(いざわきよじ)
栃木県県土整備部
都市計画課長
技術士を目指した理由
 時代のニーズに的確に対応した良質な社会資本を整備し、公共サービスを提供することが技術公務員の基本的な使命であり、そのために、しっかりした技術知識や幅広い視点を日頃から養うことが大切だと思います。。
 私が技術士を目指そうと決めたのは、県庁に入庁して建設事業を担当し、仕事を進める過程で発生する課題を解決するうちに、自分の経験(キャリア)や技術力を証明する資格を取得しようと思ったからです。
筆記試験における傾向と対策
 筆記試験での効果的な対策としては、専門知識をいかに多く修得するかだと思います。担当する仕事のなかで、計画、設計、施工等の各段階で発生した課題に対して、解決策が求められます。その課題解決に取り組む過程で周辺技術を調べ学ぶことが、専門知識を習得するには最も効果的で時間的にも無駄がなく、しかも身に付きます。
 また、月刊建設や土木学会誌、道路などの専門誌や国土交通白書などを読んで、建設行政の動向や最新技術等の知識を整理しておくとよいと思います。特に、月刊建設は参考になります。
 そして、過去出題された問題の解答を自分で作成することです。解答を作成する過程で、基礎知識の整理や自分の弱点が補強され、専門知識の拡充や文章能力も大きく向上します。実務においても効果が顕著に現れます。
口頭試験の対策
 口頭試験では、経験業務について、どんな課題が発生し、どのように考え、どのように解決したのかを簡潔明瞭に説明できるように整理しておくことが大切です。また、技術士の責務など必ず聞かれる項目がありますから、インターネットなどで調べておくとよいと思います。
 試験官との質疑応答によって、技術士に相応しいか判断されるわけですが、事業説明会や協議・打合せなど、日頃の仕事で実戦的に訓練しておくと効果があると思います。
受験者へのアドバイスなど
 技術公務員は、地域のニーズから、調査、計画、設計、施工、維持管理、さらには評価に至るまで、社会資本整備のプロセス全体を経験し見ることができます。さらに、異動によっては、道路や河川、都市などの分野も経験することができます。
 これは、大きな強みだと思います。この貴重な業務経験(キャリア)を活かして技術士などの資格を取得することが、自分の自信や技術力の向上、さらには、よりよい社会資本の整備につながると確信します。
 スポーツの世界では、プロとアマの差は歴然としています。技術士は英文ではプロフェッショナル・エンジニアと訳されています。
 現在の社会資本整備を取り巻く環境は、人口減少、超高齢社会、地球環境問題への対応や、財政難など厳しい状況にあり解決すべき課題はたくさんあります。厳しい環境だからこそ、将来の社会資本整備を担う若い技術者には、しっかりした技術力と視点を持ったプロを目指して勉強され、技術士を取得し、課題解決に取り組まれ、ご活躍されることを期待しています。

  技術士第二次試験受験体験記


 〔取得した資格〕
  技術士(建設部門道路)
 〔資格取得年度〕
  平成18年度


飛石 勝(とびいしまさる)
福井県土木部
道路建設課主事
受験の動機、経緯
 平成10年度に県の技術系職員として採用され、コンサルタントや建設会社の担当技術者と技術的な打合せを行ってきました。しかし、自分は責任ある判断や指示を行わなければならない発注者側の監督員でありながら何の技術資格も持っておらず、逆に受注者側のベテラン技術者の方々からいろいろと教えていただくことのほうが多かったため、そのような立場にある自分にとても違和感を覚えていました。
 そんな思いもあり、日々技術力の研鑽を重ねることでいつかは技術士の資格を取得し、技術的にも精神的にも対等に受注者と応対できるようになりたいと考えるようになりました。
筆記試験における傾向と対策
 平成19年度から試験の方法が大幅に変更されたこともあり、役にたつかどうかわかりませんが、自分の体験を述べさせていただきます。
 最初は何をしてよいのやらさっぱり見当がつかない状態でしたが、インターネットの技術士関連サイトでの情報収集はとても役に立ちました。受験勉強の初期の段階では、自分が受験する専門科目の過去の出題傾向の把握と、国土交通白書や道路局の重点施策、道路関連の専門誌、新聞の関連記事等から最近のトピックを収集(スクラップ)することに重点を置きました。
 また「道路構造令の解説と運用」はもちろんのこと、自分の得意分野の技術基準書等を読み直し、基礎的な知識の復習と整理に努めました。さらにスクラップしたものについては、「道路幾何構造」、「舗装」、「土工」、「防災」、「環境」、「維持管理」、「バリアフリー」、「TDM」…というふうに各種分野別にファイリングすることによって、いつでも必要な情報を書棚からすぐ引き出せるようにしていました(自分の場合は全部で30分野くらいのファイルを作りました)。これにより、練習論文の作成や勉強の効率が格段に上がりました。また、ファイルする書類には、そのとき理解した内容そのものの要約や、「こうしたら?こんな考え方は?」という何気ない発想を自分の言葉で余白に書き込み、論文作成時における論理展開の種として蓄積していきました。
口頭試験における傾向と対策
 口頭試験では、受験申込み時に経歴書に書いた実務経験の内容や、経験論文の中身に関する質問が8割近くを占めていたように記憶しています。本番では全く予想しない視点から突っ込まれることがありますので、同僚などの協力を得て、事前に模擬口頭試験を行い、多様な視点からの質問に答えるトレーニングをする方法が良いと思われます。
受験者へのアドバイス等
 いざ受験を決意されたならば、合格への「強い意志」を持ち続けることが最も重要です。また、日々の業務で大変忙しいことと思われますが、工夫して勉強時間を作り出すことも必要だと思います。通勤電車のなかや、休み時間、朝ちょっと早起きする等、人それぞれやり方はあると思いますが、10分、20分くらいの時間でも「塵も積もれば山となる」です。空いた時間をいつでも有効活用できるよう、常に何かの図書を鞄の中に持ち歩くくらいの心構えがあると良いと思います。
特に参考となった出版物等
 ・「道路」(日本道路協会)
 ・「日経コンストラクション」(日経BP社)
 ・「地域交通の未来」(日経BP社)
 ・「環状道路の時代」(日経BP社)
 ・「アセットマネジメント導入への挑戦」(土木学会)
 ・ホームページ:「技術士受験を応援するページSUKIYAKI塾」
 ・ホームページ:日刊建設工業新聞「Top News Digest」

  技術士資格は「自信を持って業務に
 携わるための第一歩」


 〔取得した資格〕
  技術士(建設部門河川、砂防及び海岸)
  技術士(総合技術監理部門 建設−河川、砂防及び海岸)
  技術士(建設部門建設環境)
 〔資格取得年度〕
  平成12年度、平成13年度、平成16年度


辻 光浩(つじみつひろ)
滋賀県土木交通部
流域治水政策室
受験の動機、経緯
 動機は、公務員技術者としての自覚を持ち、自信を持って社会資本整備に携わりたかったからです。
 私は、県職員になって6年目の頃、河川事業の用地交渉に携わりました。ある時、地権者の方から、予想していなかった質問があり、私は、その場をしのぐために、十分な検討を行っていないにもかかわらず、「総合的に検討した結果です。」とあいまいな説明をしてしまったことがありました。この時、私は、大いに反省しました。
 それ以降、自らに公務員技術者とは何かを問いかけ、結果、自信を持って社会資本整備に携わることが大切であり、そのためには、技術士の取得がまず第一歩ではないかと考え、受験しました。
筆記試験における傾向と対策
 現行試験制度においても、「建設一般」「専門」は、試験当日に、題意にあったキーワード抽出と論理構成を素早く行い、記述することが求められます。  
 その際のポイントは、「いかに自分の言葉で、具体的なアピールができるか」ではないかと思っています。
 答案例として、国土交通白書などに書いてある内容を記述したものをよく目にしますが、私はあまり賛同しません。なぜなら、白書の内容を暗記するにも限界がありますし、そもそも自分の言葉で記述することができないからです。また、試験官の立場からすると、同じような答案を読まされるよりも、ニヤニヤしながらうなずきながら読めるような答案の方が好印象ではないかと思うからです。
 そこで、私は、「〜について、あなたの考えを述べよ」との設問に対して、国土交通白書や社会資本整備審議会の答申等で基本的な方向を押さえたうえで、「私の考え」「その理由」「具体策の例示」という構成で記述するようにしました。特に、「具体策の例示」は、自らの経験を踏まえて書くため、オリジナルの内容をスラスラ書くことができます。試験前に、「今年はこんな問題になりそうだ」と複数問題を想定し準備をしておいたことも効果的でした。
 そのための準備として、常に自分の切り口で具体策を考える思考回路を持つとともに、自分の言葉で記述することができるよう、何ごともA4ペーパー1枚に「現状」「課題」「対応策案」を表現する練習をしました。この方法は、現在でも業務遂行のなかで実践しています。
口頭試験における傾向と対策
 口頭試験は、文字どおり「口」と「頭」を使う試験であり、面接試験ではないと思います。
 よって、その場しのぎの発言をするのではなく、「口」と「頭」を使って、第二・第三の問いかけを想定した回答や、自分の得意な分野に話題を引き込めるような回答を行うことが好ましいと考えています。自分の得意な分野になれば、「自分の言葉で、具体的なアピール」をすることができるからです。
 とはいえ、予定どおりに会話が弾むことなどまれです。私は、今でも上司とのやりとりなどの場面で勉強をさせていただいていますが、やはりOJTにて、先述の内容を意識したプレゼンや対応を心がけることが大切と思います。
受験者へのアドバイス、注意点、励まし等
 合格後、多くの方が、「技術者」として接してくださるのを感じます。一担当ではなく、「一技術者」としてです。これは、私のインセンティブにもなっています。
 そのかわり、言動の一つひとつに、より一層の責任を感じますが、ほどよい緊張感のなかで業務に携わると、成果の質・スピードとも向上しているのではないかと感じるため、達成感があります。また、技術者間のネットワークが格段に拡がりました。技術士取得のメリットと感じています。
 みなさんも是非受験されることをおすすめします。
 そして、ともに研鑽し自信を持って社会資本整備を進めていきましょう。さらに、公務員技術者としての存在価値を高めていきましょう。
特に参考となった出版物等
 社会資本整備審議会の答申

  技術力、そして技術者倫理の
 メルクマールとしての技術士


 〔取得した資格〕
  技術士(建設部門河川、砂防及び海岸・海洋)
 〔資格取得年度〕
  平成16年度


瀧 健太郎(たきけんたろう)
滋賀県土木交通部
河港課
受験の動機・経緯
 当時の私は、河川整備計画の策定に携わっており、行政の意思決定に関わる場で意見を述べたり、目上の技術者、学識経験者や行政職員と議論を戦わせたりする必要がありました。
 このような重責は不安を伴います。このなかで、技術者として適切な判断をする素地が自分にあるかを確認したい、不安を払拭したいとの強い思いを持つに至りました。その意味で、当時の私にとって技術士資格はそのメルクマールでした。
筆記試験における対策
 私の筆記試験対策を紹介します。現在は出題形式が異なりますが、問われる内容が質的に変わっていなければ、ある程度は参考になると思います。
 選択科目A 過去問や社会資本整備審議会河川分科会等で取り扱われた最近の話題から、テーマを5題程度選んで解答を作成しておきました。例えば、多自然川づくり、地球温暖化時代の治水政策、総合土砂管理のあり方、といった感じです。ここでは、さまざまな文献を参考に一般的な考え方を整理したうえで自分なりの考え方をしっかりと述べることに留意しました。  
 選択科目B 過去問や基準書類の改定の動向などから、テーマを5題程選んで解答を作成しておきました。例えば、護岸設計や堤防点検・補強の手順・留意点などについて、簡潔に整理しました。ここでは自分の考えを述べることは控え、正確かつ簡潔な整理を心がけました。
 建設一般 社会資本整備のあり方について、@一般的な視点からの解答とA当該年度の国土交通白書のテーマを切り口にした解答との2つを予め作成しておきました。ここでも、さまざまな文献を参考に一般的な考え方を整理したうえで、自分なりの考え方をしっかりと述べることに留意しました。
 経験論文 事業の大きさではなく、解決過程の面白さを優先して話題を選びました。行政にありがちな事業の華やかさをアピールしたい気持ちをどれだけ我慢できるかが、一番のポイントと思います。事業概要や検討結果は最小限の記述に留め、技術的課題の解決に向け、自分がどのように考え、どのように判断したのかを明確にすることを心がけました。
口頭試験における対策
 口頭試験に向けては、技術士の3義務2責務と経験論文の内容を再確認しました。あとは、試験官からの質問に忠実に解答することを心がけました。例えば、答えられない質問があっても、答えられないことを明言してから(質問に忠実に解答してから)、リカバリーする発言を続けました。そもそも技術士試験は、知識よりも技術(課題解決の腕前)を試すものであって、一部の知識が不足していることよりも論理的でない解答をする方が技術者としての評価は低いだろうと判断したからです。
 まずは、試験官と技術者同士の論理的な会話が成立することが第一、さらに、適切な判断ができる技術者としての資質、実力、可能性を真正面から見てもらおうという姿勢で臨みました。
受験者へのアドバイス、注意点、励まし等
 私の感想ですが、試験勉強を通じて、河川管理の基本思想と技術体系を知識としてある程度身につけることができたと思います。そのことが、日常業務一つひとつの根拠や背景、意義に対する自分なりの理解を助けてくれました。そして、地域社会の安全・安心といった公共の福祉という本来の責務を見失わない、適切な判断を助けてくれると思うのです。
 職業倫理が特に重要である公務員技術者にとって、技術士資格は自分の居場所を確かめるメルクマールになると思います。ご覧のみなさんも、是非チャレンジしてみて下さい。
特に参考となった出版物等
 ・河川審議会、社会資本整備審議会(河川分科会)答申・提言 −選択科目A
 ・各種基準書類 −選択科目B

  技術士第二次試験の受験対策

 〔取得した資格〕
  技術士(建設部門河川、砂防及び海岸・海洋)
 〔資格取得年度〕
  平成18年度


米田憲司(よねだけんじ)
鳥取県県土整備部
空港港湾課 副主幹
受験の動機
 土木技師として10年以上経験があるにも関わらず、業務を通じて自身の技術力不足を実感することが多々あり、また技術者としてさまざまな課題に直面するなか、次第に自身の技術力を高める必要性を強く感じるようになりました。このため、自己研鑽の一環として技術士試験の受験を決意しました。
筆記試験(部門一般、専門問題)対策
 @部門一般(建設)
 わが国の社会資本整備に関する現状認識、課題及びその解決策について自分の考えを述べる問題が出題されます。対策は、主に国土交通白書の内容理解、キーワード抽出、想定問題・解答作成ですが、解答を丸暗記するより、解答のアウトライン(骨子)を多く作成し、論理構成のチェックを繰り返すことが重要です。
 A専門問題
 平成19年度から応用能力を問う経験論文が廃止されたことに伴い、今後は仮想事例を題材とした出題が増えるものと思われます。対策としては、業務の経験を活用し、技術体系のなかでの位置付け、関連技術等を自らの知識に取り入れることが重要となります。部門一般と同様、想定問題・解答骨子の作成を十分に行いましょう。
口頭試験の傾向と対策
 @技術的体験論文
 論文自体は採点の対象ではありませんが、口頭試問の補足説明に用いる資料として簡潔で分かりやすい内容とする必要があります。出願時の経歴票と整合させるため、極力早い段階で題材・骨子の作成を行いましょう。題材は業務規模の大小より、技術者としての創意工夫が重要です。
 A口頭試問
 主に業務経歴と技術的体験論文の説明を求められますが、筆記試験のフォロー、技術者倫理・技術士制度、最近の建設分野の話題等についても事前に準備が必要です。また、稀に試験官からの鋭い質問に冷静さを失うことがありますが、受験態度全般も採点対象なので、落ち着いて受け答えできるようにしましょう。模擬面接ができれば万全です。
受験される皆さんへ
 日常業務に追われるなか、モチベーションの維持に苦労しますが、早めに全体スケジュールを立て、計画的・継続的に対策を進めましょう。また、時間と費用の面で家族や周りに方々の協力が不可欠ですので、日頃からコミュニケーションを心がけ、常に感謝の気持ちを忘れないようにしましょう。長い戦いですが、体調に気をつけてがんばってください!

  APECエンジニアへの一歩として

 〔取得した資格〕
  技術士(建設部門河川・砂防及び海岸)
 〔資格取得年度〕
  平成18年度


草野慎一(くさのしんいち)
広島県土木部
土木整備局砂防室長
受験の動機、経緯
 以前三年間ほど、海外勤務をしていたことがあります。その際、日本人技術者の場合、実力があり、かつ日本の技術士を取得していても、国際的に通用する技術資格を持っていないが故に国際入札の場で不利になるのではないかという危惧を抱きました。そして、ちょうど私が帰国した平成15年度の試験から、技術士がAPECエンジニアとの相互認証をするために制度を変えることを知り、とにかくAPECエンジニアを所有している日本人の数を増やさないといけないと考えて、まずは自分が取得しようと考えたのが直接的な受験のきっかけでした。 なお日本に帰国してからは、現在までの所、海外関係業務に携わる機会がほとんどありませんでした。それで、本文のタイトルとは矛盾してしまうのですが、結局技術士は取得できたものの、未だAPECエンジニアの取得にはチャレンジできていない状況です。
筆記試験における傾向と対策
 筆記試験対策としては、オーソドックスなことしかしていなかったと思います。経験論文は、業務の規模等によらず、人真似ではなく自分自身が苦労して対策を考えた業務を選び原稿を準備しました。当時の試験ではその暗記が必要だったので、目次構成と、挿入する図面だけは確実に暗記して、後は細部に拘らず覚えている範囲で解答するようにしました。
 平成19年度から、この暗記と試験当日の“速記”が必要なくなったのは良いことだと思います。選択科目と必須科目については、過去問の出題傾向から自分で想定問題を考え、最低限の数の想定答案を準備していました。しかし結果としてその予想はほとんど当たらなかったので、その場で気をつけたことは、あやふやな知識は絶対記載せず、自分が確実に知っている知識だけを用いて、少なくとも論理構成の破綻がない(矛盾したことや、その場の思いつきのようなことは書かない)内容とし、また数値データを覚えていたものは積極的に使用した点かと思います。
口頭試験における傾向と対策
 まず当たり前のことですが、自分の書いた経験論文のなかで質問を受けそうな点について、整理し解答を用意しておくこと、また受験申し込み時点で提出している業務経歴に記入した内容についても、同様に想定問答を考えていました。技術士制度や倫理については、参考書やインターネットから得た情報で一通りの準備はしておきました。
 なお、口頭試験での不合格率は一割程度と聞いていました。それならば、多少傲慢な考え方だとは思いますが、よほど目立った失敗をしなければまず不合格にはならないだろうと考えて、知ったかぶりをしない誠実な応答と、虚を衝かれた質問が来たときに、頭の中が真っ白になって取り乱した解答をしないよう、落ち着いて対応することには特に気をつけました。
受験者へのアドバイス等
 技術士に限らず資格というのは「たかが資格、されど資格」であると思います。一回の試験で図れる技術力など、全体からみればごく部分的な訳であり、その意味では「たかが資格」であって、取得後の継続的な研鑽が必要でしょう。他方で、例えば仕事上でつきあう初対面の人から、その場で一定の信頼を得るような場合には資格保有は有効でしょう。
 そういう意味では、「されど資格」という面はあり、受験資格を既に満たしている方は、資格を軽視したり面倒臭がったりせず、できるだけ早くチャレンジされた方が得策ではないかと思います。

  プロフェッショナルな
 技術者(技術士)への挑戦


 〔取得した資格〕
  技術士(建設部門、総合技術監理部門)
 〔資格取得年度〕
  平成平成13年度及び15年度


南里 勝(なんりまさる)
佐賀県伊万里土木事務所
港湾課課長
受験の動機・苦労した点
 (動機)
 技術士取得は、@技術者としての客観的評価を得るためA官庁の枠を超え幅広く交流を図るためB技術者としての総合的なバランス感覚を得るためC技術者としての信頼を高めるため、以上の目的があった。
 (苦労した点)
 試験勉強のなかで、多くの先輩方々からさまざまな意見や指摘をいただいたが、これらの意見や指摘を自分なりに解釈して消化することに苦労した。これを乗り越えることで、体験業務の技術的表現力が高まったと感じた。
試験の傾向と対策
 H19年度試験制度改正により、筆記試験は「選択科目(専門)」と「必須科目(技術全般)」のみ実施され、従来、同時に実施された業務体験論文は筆記試験合格後に提出することとなった。
 なお、筆記試験における選択科目及び必須科目の合格は、業務体験論文の表現力のレベルアップがなければ容易ではない。まずは業務体験論文をまとめあげ、インパクト高い表現力を得る必要がある。
アドバイス、留意点
 @これまで取り組んできた自分の業務の俯瞰的、多感的な見直しをまず行うこと。
 Aこれまでの技術体験の総まとめと捉えること。
 B専門的な論文を一般人が一度読んでみて、ほぼ何が書いてあるかが分かるような解明な表現とすること。
 C多くの有資格者から意見や示唆をもらい、素直に聞き、複合的な意見等をシンプルにまとめあげること。
 D「選択科目(専門)」においては専門的知識を披露するため奥行きのある論文とすること。一方、「必須科目(技術全般)」に
  おいては建設分野に関わる幅広い視野をもっていることを表現すること。
試験勉強の参考となるもの
 @建設関連雑誌には記述方法やポイントが掲載されている。
 A技術士関連のホームページが参考となる。
 B短期に取得する方法は、指導を直接受けられる講座や勉強会に積極的に参加することである。

  為せば成る

 〔取得した資格〕
  一級土木施工管理技士、一級管工事施工管理技士、一級建築施工管理技士、
  技術士(上下水道部門上水道及び工業用水道)
 〔資格取得年度〕
  昭和57年度、昭和62年度、平成3年度、平成16年度



中島英憲(なかしまひでのり)
佐賀西部広域水道企業団
工務課課長補佐
はじめに
 今回、私が技術資格試験合格体験記を執筆することで、これから資格を取得しようと考えている方、 もしくはすでにチャレンジしている方の一助になればと思いペンを執りました。
受験の動機、経緯
 私は、昭和62年に佐賀西部広域水道企業団に任用される前までは、水道工事を主体とするゼネコンに勤務していました。 ゼネコンの技術者として、必要に迫られて一級土木施工管理技士の資格を取得しました。一級管工事施工管理技士と一級建築施工管理技士については、ゼネコン時代の経験を活かして、 自分の力を試す意味でのチャレンジでした。
 技術士資格を取ろうとしたきっかけは、技術者にとって最高に難しいと言われている技術士試験に、当企業団で培った自分の技術力が通用するのかどうかを試したかったからです。 受験当初は何度も途中退席したこともありましたが、あきらめることなく受験しているうちに「これでやれる」という手ごたえを感じました。ちなみに技術士資格を取得するまでに9年かかりました。
筆記試験における傾向と対策
 土木施工・管工事施工・建築施工管理技士の学科試験では、過去の問題集を繰り返し、繰り返し勉強しました。実地試験は記述式ですので、想定問題と解答を策定し、特に経験問題は、想定した問題が出題されなかった場合でも、その場で臨機応変に解答を工夫できるようにして、試験に臨みました。  
 技術士試験を受験するにあたり、組織も人脈もない私は、勉強方法がわからなくて大変苦労しました。大きな自治体やコンサルタントでは、技術士の諸先輩方による試験対策検討会などが組織され、想定問題をつくり勉強会が行われているようです。身近に技術士の方がおられれば、勉強方法をご指導していただくことが最良の方法だと思います。
 私の勉強方法は、以下のとおりです。
1)過去の出題傾向を参考にして、想定問題を幾つか作成しました。
2)想定問題にあわせて、「水道施設設計指針・解説」などの資料から、重要だと思われる文章をピックアップし、大学ノート2頁ぐらいにまとめ上げました。
3)まとめ上げた資料を基に序論・本論・結論へと項立てしながら、1800字程度の解答文を作成しました。
 常日頃から水道新聞や水道公論などからの情報収集も大切です。想定問題がその年の試験に出題されなかったとしても、想定問題と解答を数多くつくることが確実に基礎力をアップさせます。次の年も次の年も同様な勉強を行いました。継続して行ったことで基礎力が身についたのでしょう。
 そして念願の合格。「継続は力なり。」
口頭試験における傾向と対策
 口頭試験では、2〜3名の試験官が技術的体験論文と業務経歴について質問を行います。試験時間が30分から45分へと長くなったことから、しっかりとした対応が必要です。そのためには、先輩技術士に話を聞いたり、ネットを利用したりして想定問答をつくることが重要だと思います。
受験者へのアドバイス等
 2月上旬の合格発表日の朝5時、日本技術士会ホームページの技術士合格者のなかに、自分の名前を見つけたときの喜びは一生忘れません。
 最後に、「為せば成る為さねば成らぬ何事も 成らぬは人の為さぬなりけり」上杉鷹山の言葉より。

  まずは、技術士試験を 受けてみては?

 〔取得した資格〕
  技術士(建設部門都市及び地方計画)
  技術士(総合技術監理部門)
 〔資格取得年度〕
  平成18年度、平成19年度


真鳥喜博(まとりよしひろ)
長崎県
長崎鉄道高架整備事務所整備課
受験の動機、経緯
 自分は社会に出て土木技術者として10数年仕事を行ってきたが、果たして土木技術者と名乗れるだけの技術力が備わっているのだろうか、 自分の技術力がどれ程か試してみよう、そう思ったのが「技術士」受験のきっかけでした。
 受験するからには、単なる力試しではなく、社会資本整備を担う技術者の責務として、自己研鑽に励み、技術力を向上させたいという強い意志を持って試験に臨みました。以下、建設部門の対策を中心に述べたいと思います。
筆記試験の対策
 建設部門の筆記試験は、過去問を分析することで、ある程度予想問題が準備できます。予想問題に沿った何パターンかの論文を事前に準備しておけば、 試験当日は、問題に合わせてアレンジすることで対応できます。
 論文対策には、国土交通白書や国土交通省の各種施策を熟読し、日頃から専門技術や学会などの情報を収集することが重要です。 建設部門では、国土交通省が考えているあるべき方向をよく理解し、このあるべき方向に沿った論文を作成する必要があります。
 また、論文を書く際に気をつけなければならないことが2点あります。1点目は、「〜求められている。」や「〜考えられる。」などのあいまいな表現を使わないことです。 2点目は、必要以上に意味のない修飾語を飾りつけた文章にしないことです。
 どちらも、私たち公務員が文章を書く際に、無意識に行っていることです。公務員は、あいまいで判りにくい文章を書いてしまう癖があるので、この点には注意が必要です。
口頭試験の対策
  口頭試験では、試験官が納得する回答ができるかどうかがポイントです。試験官が納得できなければ、再度質問されます。試験官は、受験者をできるだけ合格させようと時間の許す限り何度でもチャンスを与えてくれます。自分の言葉で回答することが重要です。  また、筆記論文についての補足説明を求められることもあるので、自分が書いた論文の復元を忘れずに行い、事前に補足内容を準備しておく必要があります。
 口頭試験で緊張しない人はいないと思います。落ち着いて、試験官の質問をよく聞いて、決して試験官と対立しないよう、沈黙しないよう、コミュニケーションを図ることが重要です。
受験者へのアドバイス
 技術士の取得を目指している方のなかには、もう少し経験を積んでから、もう少し勉強してから、という理由で、まだ一度も受験したことがない方もいるのではないでしょうか。 もし、受験資格を満たしているのであれば、少なくとも実務経験が7年以上あるのであれば、是非試験を受けてみて下さい。
 平成19年度から筆記試験の内容が改正されたので、改正前と比べて試験時間に余裕ができているはずです。それから、この試験の合格基準は6割です。筆記試験も口頭試験も、100点満点のうち60点以上取ればよいのです。  当たり前のことですが、技術士試験は、受験の申し込みをして試験を受けないと合格しません。私からのアドバイスはこの一言に尽きます。『まずは、技術士試験を受けてみては?』

  技術士を目指して

 〔取得した資格〕
  技術士(建設部門施工計画、施工設備及び積算)
 〔資格取得年度〕
  平成18年度



田中賢太郎(たなかけんたろう)
いわき市土木部土木課
受験の動機
 現在の公共事業を取り巻く環境は、厳しい財政事情のもと、財政健全化に向けた行財政改革や、少子高齢化による社会保障費の増大などから、 毎年のように公共事業予算が削減されるなど、厳しい状況が続いていますが、その一方で、品質を確保しながら低コストでより良い社会資本を提供していくことが社会的使命となっています。 そこで、私は、さまざまな問題に対し、技術的な創意工夫により解決策が見出せるような応用力のある技術者になりたいと考え、 技術者に与えられる最高峰の資格である技術士の受験を目指しました。
 また、なんとなく過ごしてしまいがちな日々の業務においても、資格取得といった目標を持ち続けることで、モチベーションの維持にもつながり、 さらには、技術的にもスキルアップが図れるのではないかと感じたことも受験を決めた動機の一つであります。
筆記試験における傾向と対策
 平成19年度から試験方法が改正となり、筆記試験については、技術的体験論文と一般択一が廃止され、一般記述と専門問題だけになるなど、受験科目が大幅に削減され、受験者への負担が軽減される一方、 技術者として必要な専門知識ばかりではなく、応用能力、論理的考察力及び課題解決能力を重視する設問となることから、その背景や根拠などについても体系的によく理解しておかなければなりません。 日々の業務や家族サービスなどで勉強時間を確保することは簡単ではありませんが、早朝や昼休み時間などを有効に利用し、必ず毎日勉強する習慣をつけることが大切でしょう。
口頭試験における傾向と対策
 口頭試験についても併せて改正となり、筆記試験から削除された技術的体験論文については、口頭試験で重点的に問われることから、論文のできが合否の鍵を握ると考えられます。作成した論文は、先輩技術士や職場の上司・先輩などに見てもらい、 アドバイスを受け、さらに練り上げていくことがより良い文章に繋がっていくでしょう。
 また、口頭試験では、技術者としての経歴、見識、応用力及び倫理観などを総合的に判断されるため、戸惑うような質問も数多く出されますが、事前に想定質問を作成し、予行練習を行っておけば、試験当日も自信を持って臨むことができます。
受験者へのアドバイス、注意点、励まし等
 公務員技術者は民間技術者と違い、資格は必ずしも必要なものではなく、また自費で受験しなければならないことから、受験者が少ないのが現状であります。 しかしながら、行政サービスに対する社会からの要求はますます高まっており、高度な技術的・社会的判断を適切に行うためにも、多くの方々が技術士取得にチャレンジし、資質の向上に努められることを期待したいと思います。

  試験制度改正前年
 どげんかせんといかん


 〔取得した資格〕
  技術士(建設部門都市及び地方計画)
 〔資格取得年度〕
  平成18年度


佐藤光春(さとうみつはる)
延岡市都市建設部
都市計画課計画係長
受験の動機
 民間の同級生が取得していたことと、最近の自治体の建設行政を考えたとき、選択と集中が求められており,市民や議会への説明責任が重要になっていることや公共工事の品質確保のためにも職員の資質の向上が求められていると思ったからです。 試験制度改正目前で、前年に試験に落ちていたので、どげんかせんといかん(宮崎弁で、何とかしなくては)状況でした。
筆記試験における傾向と対策
 時間が限られていますから、設問をよく読み、テーマに沿い、起承転結で、決められた枚数内に収める必要があります。一朝一夕にはできないので、日常の練習が大事です。自分で想定問題を作り、試験と同じ時間内に書き上げる練習をしました。試験のテーマについては、国土交通白書、月刊建設、土木学会誌を熟読するとともに、社会資本整備で大きな問題となっている事項をまとめました。国等の考え方ばかりでなく、自分の考え方を聞かれますので、自己の考えをまとめる必要があります。平成19年以降は、応用能力や問題解決能力が問われていますから、自分の思考を文書で表現する訓練が必要と思います。
口頭試験における対策
 私の場合は、制度改正前ですから、経験論文についての質問は僅かでしたが、論文に対する想定質問や、試験以降の論文の業務進行についてまとめました。
 制度改正により、経験論文が筆記試験後提出となりましたので、口頭試験で、この業務で技術士として相応しいのかと問われる機会が増えると思います。理論武装が必要です。専門の論文や建設一般の論文については、試験後すぐの復元が必要です。 私の場合、合格とは思わなかったので、合格発表後あわてて復元しました。試験官から「あなたは論文では○○と言っていますが」と何回か聞かれ、冷や汗が出ました。また、論文を復元したら、補足する点や修正する点について追加学習が必要です。 試験官は、論文をもとに、試験後の技術者としての継続研鑽を確認してくることがあります。私のときは、まちづくり三法が改正されていたので、内容や対処法について問われました。
受験者へのアドバイス
 受験者の多くは、仕事を持っていますから勉強時間を確保するのは大変です。私は、試験半年前から、一日1時間以上は机に向かうと決め、残業があろうと飲み会があろうと机に向かう癖をつけました(酔うと文字が躍りますが)。 趣味のジョギング中も復習に活用しました。また, 土日は早起きして半日勉強しました。どの受験者にも等しく一日は24時間です。 何事も、合格するぞというモチベーションを維持し、工夫し、効率よく時間を活用することだと思います。
 公務員の場合、資格を取得したからといつて、手当てがつくわけではありません。試験を資格取得の目的とせず、この取り組みを通じて自分達の技術水準をあげるという目的に、つまり、手段の一つにすることが、求められていると思います。 個々のレベルアップは、最終的には国民・市民へのサービスの向上に繋がっていくと思います。
参考となった図書等
 ネットの「技術士試験を応援・・」等の情報は、地方都市で試験に関する情報量の少ない私には参考になりました。書籍は近代図書株式会社の技術士シリーズを購入し、傾向と対策について学習しました。

  一級建築士の受験対策

 〔取得した資格〕
  一級建築士
 〔資格取得年度〕
  平成15年度


安藤泰秀(あんどうやすひで)
栃木県県土整備部
建設課主任
受験の動機・経緯
 学生時代に建築を学び、建築に携わる職に就けば、一級建築士の資格取得が大きな目標のひとつとなりますが、就職当初は漠然と一級建築士の取得をめざしていました。
 当時、建築指導担当として確認申請審査業務を主務として業務していましたが、日々の業務のなかで違和感を感じながら業務をするようになりました。
 その違和感とは、資格を有する一級建築士や二級建築士に対して指導する立場であるにもかかわらず、自分は資格を持たずに業務を行っているというものでした。
 指導する立場にある者は、指導される者と同等以上であるべきであり、その判断指標のひとつが一級建築士という資格であると思い、取得に向けて真剣に取り組むようになりました。
 合格発表の数日後、「これで対等に話ができるね。」と、設計事務所の担当者に言われ、資格のうえで同じステージに立つことはとても大切なことであると感じたことを今でも覚えています。
学科試験の傾向と対策
 計画・法規・構造・施工の4分野から出題される問題のなかには、試験当日にはじめて見るような問題であったり、どんなに考えても解答を導き出すことができない問題というものが当然存在します。
 その一方で、日々の「訓練」で容易に解答を導き出すことができる問題もあります。その典型が法規で出題される問題です。法令集を試験会場に持ち込むことが可能であるということは、 解答集を持ち込んでいることと同じであり、解答がどこに書かれているかを見つける「訓練」をすることで得点することができます。
 また、構造力学についても、過去の問題からある程度の出題傾向があるので、計算パターンを覚えてしまえば解けてしまう問題が多いように思われます。
 各分野に共通して言えることは、過去に出題された問題、または類似の問題が多数出題されているので、過去問題を重点的に勉強することも効率よい方法だと思います。
 学科試験の場合は、問題集等を一冊鞄の中に入れておけば、移動時間中や昼食後の空き時間などに勉強することが可能です。仕事と勉強を両立させなければいけないので、限られた時間で、効率よく勉強することが合格の鍵だと思います。
製図試験における傾向と対策
  製図試験は、エスキスの時間を含めた試験時間になるので、エスキスに時間がかかれば製図の時間がなくなるし、図面を描くスピードが遅ければ、逆算してエスキスの時間が取れなくなります。
 製図の勉強では、上記の理由から時間配分を意識しながら練習問題を解く必要があります。
 エスキスにおいては、課題で与えられた条件を的確に捉えてプランに反映させるために、課題の内容を理解する読解力が必要となります。 こればかりは、過去に出題された問題等から出題形式に慣れ、自分の手法を確立していくしかありません。
 エスキスの次は図面を描き始めることになりますが、時間がないからといってエスキスが中途半端な状況で描きはじめると、途中で手が止まってしまい余計に時間がかかってしまいます。
 製図のスピードを上げるには、とにかく手を動かして1枚でも多くの図面を描く練習をすることです。私が実際にやった練習方法としては、定規を動かす手の感覚で壁の厚みや 階段の踏み面を均一に描けるようになるまでひたすら描き続けたり、部位によってはフリーハンドで描いてしまう練習をしました。
 実際の試験においては、試験終了の30分前に図面が完成するくらいの時間配分で、残りの30分で見直しをするというのが理想だと思います。
これから受験される方へ
 近年、試験の内容が変化し難易度が増しています。腹をくくって、土日返上で取り組み、一発で合格してやるという意気込みと強い意志が合格につながると思います。がんばってください(私は腹をくくるのに4年かかってしまいましたが…)。

  一級建築士取得までの5転6起

 〔取得した資格〕
  一級建築士
 〔資格取得年度〕
  平成17年度


平 清朗(たいらせいろう)
大分県臼杵土木事務所
総務課建築住宅班
受験の動機・経緯
 平成10年に入庁し2年を経過した私(当時25歳)は、行政の建築職員としてやっていくには、「建築基準適合判定資格者(旧建築主事)」を最低取得しなければならないと単純に考えていました。読者の方で建築系の職員の方はすぐに分かると思いますが、資格者免許を取得するためには、一級建築士の免許と2年間の確認審査の実績が必要となります。実績の方はそのとき既に受験資格の要件を満たしていましたが、一級建築士の方はなんとか取得しなくてはなりません。ということで、少々受身的な動機で受験することとなりました。
学科試験における傾向と対策
 とりあえず、一級建築士の受験資格の要件(四大卒の場合、実務2年)を満たしていた私は、専門学校に行くことなく(学費を浮かそうという魂胆)独学で学科の勉強を始めました。とりあえず本屋に行き片っ端から参考になりそうな本や問題集を探し、フィーリングの合う図書を購入いたしました。あとは、ひたすら勉強するのみなのですが、 当時土木事務所にて確認申請の審査を行っていたこともあり、環境、法規、構造、施工の4教科の中で、法規に関しては、あまり勉強することなくまあまあ点数が稼げました。また、施工も勉強すれば、ある程度平均して取れたのですが、環境と構造に関しては、なかなか安定することなく試験を受けました。 ちなみに、私は一級建築士を合格するまで6年の月日を要しました(学科は4回中2回合格、製図は4回目で合格)。ベテラン受験者?となっていたのですが、最後までこの2教科については安定感を欠きました。しかし、最近思うのは、構造計算書に慣れ親しむことができれば自然と構造の点数は上がるのではないかということです。これから受験する方はどうか試してみてください。
製図試験における傾向と対策
 この試験については、エスキスができれば自動的に3時間以内で製図が描きあがるように訓練することが絶対条件です。話はそれますが、製図を4回受験したうち最初の2回は独学でチャレンジしました。 しかし、なかなかうまくいかず3、4回目は専門学校に行きました。合計120枚程度(20+20+40+40)は描いたと思います。ということで、とりあえず描いて枚数が増えれば、自然と製図に自信がつき、エスキスに集中できるようになります。 そこで、私のとったエスキスを解く方法は「問題条件の分析を自分なりに行い、それを消化すること」です。そうすることにより、厳しい条件の問題でも、高い確率で時間内(2時間半)にエスキスが完成するようになりました。
 後もう一つ重要なのが、試験の当日、問題文をしっかり読んで間違えずに理解するということです。これで、私も失敗しましたし、他の受験生も結構失敗していました。
おわりに
 この試験は私の楽しかったはず?の20代後半の夏を奪っていきました。6年間を振り返ると、がむしゃらだった1年目、2度目の製図に落ちて落胆した2年目、再出発の学科でこけた3年目、先の見えない暗ーい4年目、2度目の学科合格で少し先の見えた5年目、崖っぷちの努力が報われた6年目という感じでした。現在は、当初の目標だった建築基準適合判定資格者の試験にも平成19年度に無事合格し、ようやく試験に追われることがなくなりました。 この先まだまだ努力し成長しなければなりませんが、自分のなかで良い節目となったことは確かだと思います。最後に、これから受験される方、もしくは受験中の方がこの文章を読み、少し前向きな気持ちになっていただけたなら幸いです。

  技術力向上への一つの取り組み

 〔取得した資格〕
  一級土木施工管理技士
 〔資格取得年度〕
  平成18年度


荒川裕利(あらかわひろとし)
栃木県鹿沼土木事務所
河川砂防部
受験の動機
 近年、「公共工事の品質確保」や「若手技術者の技術力向上」という話題が私たち技術公務員の間でよく取り上げられています。私は、大学卒業後に栃木県庁へ就職し5年が経過しますが、実際の工事現場で働き、目的物を作り上げるような経験をしたことがないために、自分の技術力がどれほど現場で通用するのか、未だに疑問符の取れないところがあります。
 そんな私が「栃木県をより良くしたい。品質の高い工事をしたい。そのためにも現場代理人の方とさまざまな議論を交わし、指導すべきところは指導できるような力を身に付けたい。」との思いで受験勉強を始めたのがこの資格でした。当時の私は、監督員とは名ばかりの監督員で、現場に出ては代理人の方からの相談に四苦八苦してしまう日々でありました。
試験対策
 受験にあたって一番重要なことは、いかに自分のモチベーションを高い状態に保つかであると思います。私の場合は、「自分は何のために勉強するのか。」という目的(動機)を明確に意識していたことが、試験日まで集中できた一因でした。また、同じ気持ちを持つ友人を巻き込んで、毎週図書館で勉強できたことも大きなプラスの作用だったと思います。
 試験内容は、学科試験が測量・契約・施工管理及び土木工学の基礎・各種工法・法規に関する四肢択一試験、実地試験がそれらに関する記述試験及び経験論文となっていました。  使用した参考書は旺文社のものを1冊。試験科目の分野ごとに章立てがなされており、ページの左半分には要点がまとめられ、それを一読・確認した後に右半分の演習問題を解いていくというスタイルが、自分には合っていました。
 受験申込み後、勉強スケジュールを試験日の2週間前に全ての章が終わるよう計画して、後は時間を見つけては参考書を進めていきました。また、ふだん仕事で使用する仕様書や指針、例規集等を併せて確認しながらノートにまとめていったことも、理解を深め、記憶を確かなものにするために効果的であったと思います。
「土木施工管理技士」を取得して
 資格取得の過程において、仕事にかかわる知識を体系的かつ広範に整理・勉強できたことは非常に有意義だったと思います。しかし、ここで得られたものはあくまで基礎知識であり、これにさらなる経験を重ね、また、経験豊富な諸先輩からの指導をいただくことによって、初めて知識が生きた技術力になっていくものかと、おぼろげながら感じています。
 価値観の多様化により公共サービスに求められる住民ニーズも多様化しています。そんな時代だからこそ、私たちには専門的な技術力とその説明力が求められます。技術力向上への一つの取組みとして資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。
 私は次のステップへ向けて、今日も新たな一歩を刻んでいます。

  感覚をかたちに

 〔取得した資格〕
  一級土木施工管理技士
 〔資格取得年度〕
  平成19年度


岡田順三(おかだじゅんぞう)
鳥取県日野総合事務所
県土整備局計画調査課土木技師
受験の動機、経緯
 職員になってから4年目、現在は設計業務に携わっていますが、入ってすぐの2年間は事業用地の取得を主な業務として、工事関係は災害復旧業務を担当させていただきました。 同期で入った仲間達は、最初から工事監督等を主とした業務につき、現場での経験を積んでいましたが、「自分は土木技師として入ったのに技術者としての能力を磨くチャンスが少ないな。」という気持ちが正直なところで、せめて資格試験の勉強をすることで技術者としての感覚を磨こうと思ったのが受験のきっかけでした。
試験の傾向と対策(合格するためのポイント)
 私の現場経験といっても災害復旧業務で担当させていただいた中小河川の護岸復旧がメイン。そんな若輩者の私が合格するために取り組んだポイント(意気込み)を箇条書きにします。傾向と対策は、各出版社さんが出されている参考書にはかなわないので記述は控えます。また、ここで書くことは、私と同じ若い技術者の方を思い浮かべながら書いていますのでご了承下さい。
@「現場経験がないから……」という自分への言い訳をしない覚悟で勉強に望む。(想像力豊かに現場を思い浮かべながら勉強する。)
A自分が「コレ!」と思った参考書は最後までやり抜き、それで不合格となったら出版社さんに文句をいう覚悟で勉強に望む。(どの出版社さんの参考書も合格を目標として内容が構成されているので、そのとおりにやれば落ちるはずない。)
B過去問(過去の類似問題)は一問も間違えない覚悟で勉強に望む。(仮にあなたが6割正解で合格したとしても、4割の施工管理は間違っています!)
 @ABの気合(あくまで意気込みです)で勉強すれば一級土木施工管理技士の資格取得に関しては大丈夫だと思います。
受験者へのアドバイス、注意点、励まし等
 私が勉強する際に一番注意したことは、「管理すべき基準が生み出された根拠を考える」こと。
 無論、そのすべてを理解することは困難ですが(例えば、技術及び数値的な管理基準は概ね「物理、化学、数学、統計(経験)」にその問題が帰着すると思います。)、それにチャレンジすることによってそれまで感覚的に理解していたこと、経験的に伝えられてきたことの真理(かたち)に近づくことができるのではないかと思っています。真理を知る(近づく)ことができれば、難しい応用問題が出題されても解くことは可能です。
 資格取得という「事実」は大事かもしれませんが、取得するまでの過程とその後の継続した努力こそが技術者には必要だと思いますし、それを実践するステップとして資格取得を目指すことができれば、皆様にとってよりよい結果になるのではないかと思います。
特に参考となった出版社等
・「4週間でマスター 1級土木施工管理技術検定問題集 学科試験対策編」(弘文社)
・「4週間でマスター 1級土木施工管理技術検定問題集 実地試験対策編」(弘文社)
・土木工事施工管理ハンドブック(鳥取県県土整備部)
・わからない言葉は先輩技術者やインターネット、大学で利用した教科書を参考にしました。

  若手技術者も
 頑張っているのだ!


 〔取得した資格〕
  一級土木施工管理技士
 〔資格取得年度〕
  平成18年度


稲森隆洋(いなもりたかひろ)
宮崎県県土整備部
技術検査課技師
受験の動機・経緯
 受験の動機としては2つあります。私は、宮崎県庁に入庁した最初の職場が、出先機関にある道路を建設する係であり、当時の上司から、「公共工事の発注者として、社会基盤の整備を行っていくうえで現場を止めることは一番行ってはならない。現場を止めることは、社会基盤の整備が遅れ、その分、住民サービスへ影響が出るし、現場で働く会社の経費も掛かる。 そのため、どのような場面でも現場をできるだけ止めないように努力しなさい。(近年取り組みが進められている、ワンデーレスポンスと同じようなことでしょうか)」と言われ、現場をできる限り止めないように現場進捗等の管理などの技術力向上に努めてきたところであります。
 このようななかで、近年、団塊の世代が大量に退職され、若手技術者の技術力不足が問題となっており、現在の自分の技術力がどの程度あるのか確認をしたかったということが1つの動機です。
 もう1つの動機が、この資格を取得することにより、技術士の一次試験である技術士補の試験で一部免除になるということもあって、実務経験等からようやく一級土木施工管理技士の受験資格を得た昨年度受験を決心しました。
試験における傾向と対策
 私の場合は、職場から帰り、子供が寝静まった後が受験勉強として確保できる時間であり、1日1時間程度参考書とにらめっこしていました。
 試験に向け、参考書は2冊利用しました。1冊目は試験の傾向や模擬試験として利用するために、過去5ヵ年の試験問題が詳細に記載されている問題集、2冊目は施工管理等の分野が図解で示された用語集を利用しました。 なぜ、施工管理等の用語集を利用したかというと、平成18年度から、実地試験の出題範囲が広がると受験票と一緒に通知(平成17年度までは、経験に関する問題など回答文字数が規定されていたものが平成18年度からなくなり、解答欄に記載できる範囲での回答に変わっていました)がありました。 出題範囲が広がるといっても、どの程度広がるか判断がつかなかったため、施工管理等のポイントを抑えておけば、どのような問題にも対応できると思ったため利用しました。
受験者へのアドバイス、注意点、励まし等
 資格を取得し、ようやく受注者の現場代理人、主任技術者及び監理技術者と差が埋まったように思えますが、やはり、経験に勝るものはないので、受験勉強を通じて得た知識を今後の業務にどう生かすかが大切だと思われます。
 また、近年、受注者より発注者の資格取得について求められる要望が建設業界等からよく聞かれます。今後このような要望が強くなってくると、発注者の技術力確保の面から資格取得もある程度必要になってくるかもしれません。そうなる前に一度試験を受けてみませんか。特に日々の業務に追われ受験勉強をする時間がないと思っている方も、一度、過去問題等をご覧ください。意外と、通常業務内で得られる知識で解ける問題が数多くあります。 資格試験は学校のテストのように満点の100点を取る必要はありません。幅広い知識を得るという観点からは、100点に近い方がよいですが、合格するには一級土木施工管理技士は6割すなわち60点以上取ればよいので、限られた時間でも十分受験対策ができると思います。
 さらに、受験の動機にも書きましたが、技術士の一次試験のうち、共通試験が免除できるといったメリットもありますので、技術士を受験しようと思っている方は、一次試験の合格率を上げるためにも、まずは1級土木施工管理技士を受験してみてはどうでしょうか。実は、私もこの免除を利用し、平成19年度技術士の一次試験を受験したところです(1級土木施工管理技士の受験勉強は、一次試験の専門科目の勉強に役立ち、受験勉強時間を短縮することができました)。

  建築施工管理技士試験受験に
 ついて


 〔取得した資格〕
  1級建築士、1級建築施工管理技士
 〔資格取得年度〕
  平成13年度、平成14年度


倉田一雄(くらたかずお)
栃木県大田原土木事務所
建築部建築指導担当主任
受験の動機、経緯
 私は、栃木県職員になる以前、建設会社に勤め施工管理の仕事をしていました。そのため、受験資格となる3年以上の実務経験がありました。また、1級建築士試験に合格したことから、1級建築施工管理技士試験は、学科試験が免除になり、 実地試験から受験できるため、受験の手間も少なく感じましたので、これまでの経験がどれほどのものなのか、自分の実力を試す意味で受験しました。
実地試験の傾向と対策
 昨今の耐震偽装事件などの影響で建築士試験など建築関係の試験は、出題傾向等見直されることも考えられますが、これまでは1級建築施工管理技士試験については、出題の傾向はほぼ同じでした。まず実務経験における自らの経験や対応を記述する問題が出題されます。 その他、選択問題や空欄を埋める問題等出題されますが、建築の多岐にわたる業種や管理項目から毎年異なった問題が出題されるため、試験対策の勉強については、全般的にやらざるを得ないと思います。
試験対策に購入した図書
 受験前に出題傾向を調べたら過去数年は同じだったため、過去の出題問題と回答解説が掲載されていた問題集を購入しました。過去数年分の問題を一とおり解いたことで、記述式の回答の方法等把握できました。 実際受験したときも、同様の出題方法だったので、落ち着いて回答することができました。
おわりに
 試験を受験して思ったことは、実際の現場で経験・勉強したことが大変役に立ったと言うことです。試験勉強は問題集を一とおりやりましたが、実際の試験では出題傾向は同じでも、全く同じ内容の問題が出題されるわけではありません。 前記のとおり、建築の多岐にわたる業種や管理項目を勉強し、受験するのは大変だと思います。私は数年の現場経験でしたが、その経験で得た知識のおかげで合格できました。
 これから受験を考える人たちへは、資格を持つことも大切だと思いますが、実際の現場は知らないでは技術者として恥ずかしいと思います。是非、多く現場に足を運び、経験・実力もともなった技術者になっていただきたいと思います。