■第582回建設技術講習会(災害に強い安全な国土づくり) 〜開催について


第582回建設技術講習会 現場研修事業の概要

1 三陸縦貫自動車道 仙台松島道路4車線化事業
……………………………………………………………………………………………………宮城郡利府町〜松島町
 仙台松島道路は、東日本大震災時に食料、医療品、燃料等の救急救援物資を防災拠点、避難所に届ける緊急輸送路として機能しました。東日本大震災の復興道路として三陸縦貫道などで構成する三陸沿岸道路の整備が急ピッチで進められている中、現在、全線18.3kmのうち利府中IC〜松島北IC間11.5kmの4車線化事業を実施しています。
  この仙台松島道路は、仙台都市圏高速道路環状網において仙台南部道路と共に宮城県道路公社管理の道路であり、大部分が暫定2車線で運用されています。この道路は交通量が増加傾向にあるものの、2車線のため渋滞が慢性化しており、この渋滞解消と共に対面通行による重大事故の軽減を図るため、4車線化事業を進めています。
 完成は2013年度を目標としており、その先行区間として利府中IC〜松島海岸ICを2012年7月に開通します。更に8月には同区間内に春日PAを開設し、利用者のサービス向上を図ることとしています。残る松島北IC〜奥鳴瀬松島IC間約6.8kmの4車線化事業は、高速道路ネットワークの強化策として2012年度の着手に向けて関係機関と調整しています。今後、仙台松島道路全区間の4車線化により東北地域における重要な道路としての役割を担うこととなります。

2 旧北上川災害復旧事業
………………………………………………………………………………………………………………………石巻市
 平成23年3月11日、これまでの想定をはるかに超えた巨大な地震・津波が発生した東日本大震災では、北上川及び旧北上川の河口部周辺でも多くの尊い人命が失われました。
 東日本大震災における旧北上川の被災状況については、153箇所(うち石巻市143箇所)で堤防の亀裂、沈下や護岸の崩壊等の被災が確認されました。復旧にあたり、第一段階として、平成23年6月末(出水期前)までに、被災前の堤防形状までの応急対策及び市街地を有する河口部については、緊急的な対策として、地盤沈下による高さ不足分(高潮に対応した堤防高)について大型土のうを設置しました。第二段階として、コンクリート擁壁等による対策を平成23年8月末までに完了し、被災前の堤防の高さを確保するとともに護岸部等からの逆流防止対策を実施しています。
 また、河口部以外の被災箇所についても、被災前の堤防高まで復旧するなど、被災前の堤防機能(沈下・液状化対策を含む)を確保するための復旧事業を進めているところです。なお、今次津波により見直された海岸堤防の復旧高等と整合を図った高さで復旧を行う河口部については、第三段階として、概ね5年で河川堤防の整備を実施することとしています。

3 災害廃棄物処理事業(石巻ブロック)
………………………………………………………………………………………………………………………石巻市
 東日本大震災による災害廃棄物の発生量は宮城県内で1,820万tと推計されており、宮城県で1年間に排出される一般廃棄物の20年分にも相当します。そのうち石巻ブロックでは846万tの発生量と推計されており、県全体の47%を占めています。また、津波堆積物も県全体で1,160万m3あり、そのうち石巻ブロックでは380万m3と全体の33%を占めるなど、圧倒的な発生量となっています。
 宮城県では、陸域・海域で発生した災害廃棄物について、1年以内に災害廃棄物を石巻市が管理する一次仮置場に撤去し、これを大規模な二次仮置場に移動して一元的に処理することとしており、震災発生から3年以内に撤去・処理を終えることを目標にしています。また、災害廃棄物の一部を再資源化し、石巻港で埋め立て処分することとしており、護岸は長さ約300mで同港雲雀野地区の一角に建設し、10.3haの海面を締め切り、約100万m3の災害廃棄物を埋め立てることとしています。埋め立て用材には、同港の2次仮置き場などで再資源化され、安全が確認されたコンクリートがらや津波堆積物の土砂などを想定しています。埋立完了後は埠頭用地として活用することとしています。

4 石巻港災害復旧事業
………………………………………………………………………………………………………………………石巻市
 石巻港では、東日本大震災により、岸壁、民間護岸、航路泊地等の主要な港湾施設をはじめ、地域経済を支える臨海部の産業にも甚大な被害が発生し、生産機能や物流機能が停滞する等、地域経済に大きなダメージを与えました。また、三陸沿岸の広範囲に及ぶ地盤沈下に伴う高潮冠水及び津波被害により発生した瓦礫の迅速な処理が地域全体の課題となっています。
 雲雀野地区中央ふ頭、北ふ頭岸壁や釜地区係留施設などでは、地盤沈下等の被害を受けました。南防波堤や西防波堤では、堤体の沈下や法線のズレ、ケーソン下面の基礎マウンドまで被害が及んでいました。
 また、民間港湾施設については、各企業の専用岸壁・護岸及び工場、倉庫、事務所等が壊滅的な被害を受け、多くの企業が石巻港での再建を誓い懸命の復旧活動を進めていますが、必要な経費が莫大であり、経営基盤の弱い地元中小企業には大きな痛手となっています。また、石巻港は産業・物流の拠点でもあり、地域雇用の創出の場でもあることから、早期復旧・復興は、産業・物流をはじめ、雇用回復にも直結します。このため、新たな助成制度の創設や長期無利子融資等の優遇措置、津波により流失、損傷した荷役機械等に対する公的支援制度の整備を求めていくこととしています。被災した港湾施設は概ね2年を目途に港湾機能の本格復旧を目指していますが、復旧にあたっては、定期的に利用者調整会議を開催し、港湾荷役作業等と工事との調整を図っていくこととしています。

5 名取海岸(閖上・北釜地区)災害復旧事業
………………………………………………………………………………………………………………………名取市
 津波は名取市内を南北に走る仙台東部道路で堰き止められたかたちで、平野部地域まで浸水しました。沿岸部地域東北部の閖上地区及び仙台空港東部周辺の北釜地区については住宅家屋、農地、公園緑地、防潮林(クロマツ林)が浸水または押し流されるなど被害は甚大でした。
 海岸復旧事業では、震災後早期に復旧が開始され、高潮や数十年から百数十年に一回程度の発生が予想される津波を想定し、堤防の高さを7.2mに統一し、背後に位置する仙台空港や自治体の復興を防災面から支える役割を果たします。
 復旧する海岸堤防は、津波に対しても破壊されにくい「粘り強い構造」とするために、天端保護工の強化、内陸側法面の強化や法尻保護工を計画します。
・法尻保護工の設置:堤防内陸側の洗堀に対処するため新たに2t/個のコンクリートブロックの設置を計画
・内陸側法面の強化:法面の洗堀に対処するため、従来被覆工より重量を上げ2t/個のコンクリートブロックの設置を計画
・天端保護工の強化:堤防天端の洗堀に対処するため、新たに2t/個のコンクリートブロックの設置を計画