■第29回欧州建設事業調査団

〜公式訪問視察先概要〜
ボタン ダルムシュタット(ドイツ)
ダルムシュタット市はドイツのほぼ中央、フランクフルトから南に40kmに位置し、人口は14万人。化学・機械工業、 官公庁中心の都市で、文化・スポーツ機能や商業施設は、周辺都市のセンター的な役割を担っている。
 約30年前、市郊外に大商業施設建設の計画が持ち上がり、特に都心部の衰退の恐れがあったことから、未整備であっ た都心の一等地(ルイーゼン広場地区)の市有地に大型ショッピングセンターを誘致することに成功した。同市ではこの 機会に都心の再整備を計画。 特に、交通渋滞と都心の買い物客の駐車場の問題を解決すべく、新しい交通計画では、幹線道路、駐車場の地下化が図られた。
 大型商業施設を誘致した場所は、都心にある市有地で、2ブロック。一つは総合デパートブロック、もう一つは、上層階部 が市行政機能、下部階が専門商店街モール、地下部は駐車場の複合機能を持つ建築物。複合機能建築物の建設に当たって、都 心部の自動車交通の一方交通の環状線がつくられた。
 このルイーゼン広場の整備が終わってから20年後の98年、隣接した都心拡張区域の「カレー」ブロックが竣工。 これは、二つの古い赤レンガつくりの機械ホールの保存を中心にした都心再整備で、外形はそのまま残され、内部だけの改造 で新しく生まれ変わった。
このように、都心部への大型商業施設の誘致による都市の活性化と、これにあわせて都市基盤の整備が図られた事例であり これらを調査する

ボタン ロスドルフ(ドイツ)
ロスドルフはダルムシュタット市の東隣にある小都市で、人口は約1万人。地域空間整備計画では 住民の日常生活一般を担う下位センターの位置付け。
 この街は、道路に面して家が立ち並び自然に集落が発展、道路が重要な生活空間となっていた。 幹線道路は幅員が狭いが、交通量も多いなど都市環境は悪かった。このため、70年代当時の道 路拡幅計画では、通りに面した片側の建物を全てを取り壊す計画とされ、事業決定も済み、一部 建物の取り壊しが始められた。また、市街地の内部に新設の環状道路が計画され、このために役 所は町中心部の関連敷地を取得していた。
 その後、ロスドルフは州の農村整備計画プログラム(目的の一つは、「歴史的な地域特有の景 観と環境の保全と維持」、9年間の建設助成金付き)の適用を受けることになった。85年、こ の計画策定が民間の都市計画事務所に委託され、従来の計画を新しく考え直すこととなった。こ の時期、住環境意識の高まりもあり、この都市計画事務所では、議会と州の道路局を説得した。 これらの解決策は、「アンガー形式」(注)の道路をつくることである。
 こうして、計画変更が行われ、アンガー形式の広場とその周辺の道路と建物について、都市計 画法による地区詳細計画(Bプラン)がつくられ、地元の信託銀行の投資で、全体を一つの建物 としてつくることになった(建物は2階プラス屋上階で、1階には商店が入る。)。
 農村整備計画の目標の一つは、地域のセンター即ち人々の出会いの場の作成または補強。これ まで地域の中心らしいものはなかったが、道路拡幅用に取得した土地を利用し、主な通り(ウイ ルへルム・ロイシュナー通り)がアンガー形式の道路となり、地域の中心に生まれ変わった。
 アンガー広場は道路であり、市民の憩いの空間でもある。都市空間の改造の一つの手法であり 、また、計画の変更を伴う事例でもある。
 (注)「アンガー形式」:アンガー(Anger)とは北ドイツの村落に見られる広場の形式で、 道路の一部が広がった形の街並み形式。

ボタン アウクスブルグ(ドイツ)
 アウクスブルグ市はミュンヘンから北西に60q、ヴュルツブルクからフュッセンに至るドイツ・ロマンチック 街道最大の都市で、人口は25万人。
 歴史は古く、市の中心を南北に貫く大通り、マクシミリアン通りは、ルネッサンス期の装いで飾られた家々が並 び、保存も行き届き、美しい町並みが形成され、ドイツ有数の素晴らしさを誇る。16世紀の大銀行家フッガーに より造られた集団住宅フッゲライは、世界で最も古い社会福祉施設である。
 19世紀後半からディーゼル・エンジンの開発などドイツの新技術発展に大きく貢献している。
 アウクスブルグ市は、環境問題に熱心な都市として、ドイツの中でもフライブルグと並ぶ環境都市といわれており 、各種の環境関係の施設や機関が集中している。また、同市では、排ガスの少ない天然ガス自動車の利用を推進して おり、96年から市営バス、公共団体の車両が段階的に天然ガス車に入れ替えられている。
 同市の、歴史のある市街地の保存、住宅の近代化、交通緩和策、工場の移転等の状況や都市政策について調査する。

ボタン ラ・ロッシェル(フランス)
 フランスの大西洋岸にある人口約13万人の歴史都市ラ・ロッシェルでは、近年の都市政策として、 「都市環境(大気、騒音、歩行者空間、オープンスペース、自転車)」、「公共交通」、「電気自動車」 の3つの指針のもと運営。歴史的環境と生活環境に比重を置く都市政策において、フランスでもパイオ ニアと位置付けられ、絶えず新しい街づくりを続けている現代都市。
 1970年には都心部をフランスで最初に歴史的環境保全地区に指定し、71年から大気汚染を観測 、コントロールし、75年にはフランス第1号の歩行者専用ゾーンを設置。76年には誰でもが使える 「黄色い小自転車」の交通施策が採られ、マストランジットに依存するタイプではないマルチモーダル の公共交通サービスの提供など、効率的な都市内公共交通機関を選択できるよう「Autoplus」名づけら れたサービスが作り上げられた。
 現在、電気自動車の街とすべく努力が続けられ、ラ・ロッシェル市(施設整備)、電気会社(充電スタンド等) 、PSAプジョー・シトロエン(電気自動車提供)と三者体制で普及に向け運用の試験等が約2年間にわたり行わ れた。短時間公共レンタカー、電気スクーター、電気ボート等、公共交通機関とあわせ選択制が拡げられている。
 このように、歴史的環境と生活環境の保全の観点で評価される同市の都市生活と交通環境のあり方や街づくり の都市政策について調査する。

ボタン アンドレ・シトロエン公園管理事務所(フランス)
 パリの再開発は、都市の魅力を維持し多様な都市活動を支えるべく、住宅供給に力を入れるとともに、 魅力的な居住環境を周辺地域にも提供するために公園を整備することに特徴が見られる。
 シトロエン・セヴァンヌ地区は比較的パリの中心に近く、自動車メーカーシトロエン社の工場や倉庫 のあった広大な跡地である。セーヌ川に接する土地なので、その利用は歴史的にパリとセーヌ川の関わ りを意識して整備されてきた。都市再開発として、住宅を主に、商業業務活動が混在する新しい地域を 創造するとともに、整備する公園は、地域の憩いの場になると同時に、地域自体の価値観を高めることが要求されていた。
 同地区の開発は79年に指定され、2,500戸の住宅と商業業務ビルを建設し、14haの公園を 整備するのが主目的。アンドレ・シトロエン公園のコンペは85年に行われ、63案の中から類似の 2案を当選案として採用し、これらで実施設計がなされるという変則的な決定がなされた。92年に 利用され始めたが、公園全体の完成は96年。
 この公園には様々な要素が含まれているが、「神殿のような温室」、「展示空間」、「庭園」、 「運河・水路」、「自然の状態の空間」などについて、斬新なデザインと既存の町並みとの空間的 連続性において評価の高い公園となっている。
 この公園の計画、コンペ、管理等について調査する。

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